TOP > 退職金をめぐる様々な問題 (労務情報NO.110)

 

退職金をめぐる様々な問題 平成15年6月25日 発行

現在の厳しい経済情勢の中、退職金制度を改定する企業が増えています。これに伴って、会社と社員との間で退職金をめぐるトラブルも増加しています。そこで今月号では、よくあるトラブルの対処方法、トラブルを未然に防ぐための退職金規程の定め方等をQ&A方式で解説いたします。

 


退職金制度を設けるか設けないかは会社が自由に定めることができる事柄であり、退職金制度がなくても法令に違反するものではありません。しかし、就業規則や労働協約に退職金制度を定めている場合や、就業規則や労働協約に退職金制度の定めがなくても退職する社員に慣行として退職金を支給している場合には退職金の支給が義務付けられることになります。

以下、ケースごとにQ&A方式で解説いたします。

懲戒解雇に該当するかどうかの調査中に自己都合退職を申し出て退職してしまった社員に対して、後日、懲戒解雇に該当することが判明した場合でも退職金を支払わなければならないのか。
 
退職日が懲戒解雇日前であれば自己都合退職扱いとなり、懲戒解雇をする余地はなくなります。また、懲戒解雇日をさかのぼることもできません。したがって、原則としては規定どおりの退職金を支払わなければならないことになります。

<対処方法>
退職金規程に「懲戒解雇事由又は懲戒解雇相当事由がある場合の退職について退職金を支給しない」または「退職金支給日までに在職中の行為について懲戒解雇事由が発見された場合には退職金を支給しない」「懲戒解雇事由に該当する事故があるときは事故解消後に支給する」「退職金支給後に懲戒解雇事由が判明した場合には退職金の返還を請求する」などの一文を付け加えておきます。そうすれば、これらの規定を根拠に合理的な範囲内で退職金を不支給あるいは減額、返還、支給延期をすることができます。

退職金を大幅に減少させるよう就業規則を変更したいが
 
退職金制度を社員に不利益な形で変更することは、原則として社員から個別に同意(労働組合員については労働組合の同意)を得た場合でなければできません。 同意しない社員にも変更を適用させるには、「変更内容に客観的合理性があること」が必要になります。

【客観的合理性の判断基準】

  1. 変更によって社員が被る不利益の程度
  2. 会社側として変更の必要性の内容・程度
  3. 変更後の就業規則の内容自体に相当性があるか
  4. 代償措置その他関連するほかの労働条件の改善状況
  5. 労働組合等との交渉の経緯
  6. 他の労働組合または他の社員の対応
  7. 同じような事柄に関する社会の一般的状況など
<対処方法>
社員個々の同意が得られない場合、会社側として対処できることは上記の条件をいかに客観的に合理性のあるものにできるかということになります。

懲戒解雇になるところを温情で自己都合退職扱いにした場合、退職金を不支給にすることはできるか
 
設問のケースの場合、退職金を不支給または減額できる場合の条件をどこまで詳細に規定しているかがポイントになります。

その上で、退職金の不支給・減額が合理的と認められるには、以下の3つの条件をすべて満たしていることが必要です。

  1. 退職金規定に不支給および減額条項を定めていること
  2. 社員の行為が不支給および減額条項に定める事由に該当すること
  3. その行為が社員の過去の功労を抹消するほどの背信的な行為であること
<対処方法>
退職金規程に「就業規則の規定により懲戒解雇した場合には、退職金は支給しない、ただし情状により減額とすることもある。 手続き上自己都合退職の形式により退職させたときも同様とする」などの定めをしておきます。

同業他社へ再就職した者には退職金を支払わなくてよいか
 
大量に社員を引き抜いて競業会社を設立したなど、特に背信性の強い場合には、競業避止義務違反を理由とした退職金の不支給が認められる可能性がありますが、単にライバル会社に就職したというだけではまず認められません。
退職金の減額については就業規則などに具体的な定めがあれば可能といえます。(裁判例で「退職後一定期間内に同業他社に就職した場合は退職金を自己都合退職の2分の1とする」という規定が認められたケースがあります)

<対処方法>

  1. 労働契約上で競業避止義務を課しておく
  2. 合理的な範囲で競業を制限する
  3. 退職金規程に退職前・後を問わず競業避止義務に反した場合は退職金を不支給または減額とする定めをおく
これらの条件を満たした上で、社員の行為の背信性に応じて総合的に判断されることになります。
判例では上記のほかにも個々の具体的な事情が考慮される場合があります。

| 戻る |

Copyright(C) 1998-2003 CommunicationScience Co.,Ltd All Rights Reserved