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年金制度改革(1) 平成16年1月25日 発行

厚生労働省が作成した年金制度の改正案をうけて昨年12月以降、給付と負担に関する政府・与党案が次々と発表されています。主な内容は厚生年金の保険料率の上限を18.35%とし、今年の10月から毎年0.354%ずつ上げることと、年金給付を現役世代平均手取り収入の50%は確保することです。これらのポイントを前提に年金改革の具体的内容について3回にわたって解説します。

主な改正案のポイント
(1)年金の給付水準は現役世代平均手取り収入の50%を
  下限とし、50.1%を確保
(5)パートタイマー、アルバイトに対する厚生年金の適用拡大
(2)マクロ経済スライドの導入 (6)在職老齢年金制度の見直し
(3)厚生年金の最終的な保険料水準を年収の18.35%に固定
  (国民年金保険料は最終的に16,000円台に固定)
(7)女性と年金(年金分割制度の導入)
(4)国民年金(基礎年金)の国庫負担割合の2分の1への引上げ (8)遺族年金、障害年金の見直し

1.年金の給付水準は現役世代平均手取り収入の50%を下限とし、50.1%を確保

政府は年金の給付水準50%以上を確保するとのことですが、具体的な将来の年金支給額は次の表(厚生労働省試算)の通りです。
世帯類型別の厚生年金額と給付水準 現在の年金受給者 2025年度からの年金受給者
現役世代の
平均手取り収入
世帯の年金額 給付水準 現役世代の
平均手取り収入
世帯の年金額 給付水準
(1)夫40年間就労、
  妻40年間専業主婦(モデル夫婦)
40.1万円 23.8万円 59.4% 50.1万円 25.1万円 50.1%
(2)夫婦で40年間共働き 64.6万円 30.2万円 46.7% 80.7万円 31.8万円 39.4%
(3)夫40年間就労
  妻子育て後に正社員として再就職
55.8万円 27.9万円 50  % 69.7万円 29.4万円 42.2%
(4)夫40年間就労
  妻子育て後にパート労働
44.2万円
+パート収入
24.9万円 56.3% 60  万円 27.1万円 45.2%
(5)夫40年間就労
  妻出産後に専業主婦
  (妻退職前6年9カ月就労)
44.2万円 24.9万円 56.3% 55.3万円 26.2万円 47.5%
(6)男性独身者40年間就労 40.1万円 17.1万円 42.7% 50.1万円 18.1万円 36.0%
(7)女性独身者40年間就労 24.5万円 13.1万円 53.3% 30.6万円 13.8万円 45.0%
(注)(3)、(4)ともに妻の就労期間は合計で25年8カ月。手取り収入は世帯の合計でボーナスを含めた月額換算。給付水準は現役世代の手取り収入に対する年金額の割合。2025年度の年金月額と手取り収入は現在価値に換算。(4)の妻は現在は厚生年金未加入、将来の適用拡大により加入。(パート収入は厚生年金未加入のため、給付水準には反映されていません)

50.1%という数字は「モデル夫婦」のケースを想定した年金給付水準で、「(2)夫婦で40年間共働き」や「(6)男性独身者40年間就労」を見ますと40%を下回っています。また、将来の出生率を1.39(現在1.32)とするなど、出生率が好転することを前提とした年金給付水準の試算であり、「モデル夫婦」のケースでも50%を必ず確保できるとは言い切れない数字なのです。

2.マクロ経済スライドの導入

2005年4月から一定の範囲で、年金額を自動的に削減する「マクロ経済スライド」というしくみが導入される予定です。このしくみは年金額の調整をすることによって、労働力人口の減少で膨らむ現役世代の負担を和らげようとするものです。 具体的には厚生年金、国民年金のいずれにも共通して、賃金や労働力人口といった社会全体の保険料負担能力の変動に見合うよう年金改定率(スライド率)を調整するもので、すでに年金を受けている人を含め、今後約20年間は年平均で0.9%ずつ年金額が引き下げられます。0.9%の内訳は次の2つの要素からなっています。

(1)保険料を負担する現役世代の保険料負担能力の減少を反映した調整として、被保険者数の減少率による調整
  (毎年変動しますが、2004年から2025年までの平均では▲0.6%程度の調整)
(2)平均的な年金受給期間の延びによる給付費総額の増加を反映した調整(▲0.3%程度の調整)

ただしマクロ経済スライドによる給付水準の調整は賃金や物価が上昇する場合のみ行い、下落する場合には行わないことになっています。その場合は物価スライド(物価の変動に応じた改定)による年金改定が行なわれます。

また、賃金や物価が上昇する場合でも給付の上げ幅が小さいケースでは、年金額の0.9%をまるまる削ると前年の給付額を下回ってしまうことになるため、一定の歯止め策を設けることになっています。

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