TOP > 労災保険の補償の対象となる通勤災害 第2回 (労務情報NO.123)

 

労災保険の補償の対象となる通勤災害 第2回 平成16年7月25日 発行

 先月号(NO.122)では、通勤災害の基本的な考え方や主な給付の種類について解説しました。しかし、実際に起こる通勤途上の事故は、様々な要素がからむため、通勤災害になるかどうかの判断に悩むケースが少なくありません。今月号では、通勤災害となるケース、ならないケースについてQ&A方式で具体的な事例を交えて解説します。

【通勤災害と認められる「通勤」とは】
●労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること
●通勤時に逸脱・中断をしていないこと(日常生活上必要な行為をやむを得ない理由により行うための最小限度のものは除かれます)

Q1

当社の社員Aが、仕事の帰りに、最寄り駅から自宅までの帰宅途中にある美容院に立ち寄り、美容院を出た後に転んでケガをしてしまいました。当日は美容院が混んでおり、2時間以上はいたとのことです。この場合のケガは通勤災害になるのでしょうか?

A1

通勤災害の場合、通勤時に逸脱・中断をしていないことが条件ですが、日常生活に必要な行為を最小限に行う場合には、その行為中以外は通勤災害が認められるとされています。日常生活に必要な行為の主な具体例は、次のとおりです。
(1)帰宅途中にスーパーなどで夕食の惣菜等を買った場合
(2)独身者が通勤途中に食堂で食事をとった場合
(3)通勤途中に病院・診療所に行った場合
(4)帰宅途中に選挙の投票に行った場合 など
実は通勤途中に理髪店や美容院に行くことも、この「日常生活に必要な行為」に含まれます。したがって、このケースでは美容院を出て通常の帰宅経路に戻った後にケガをしたのであれば、通勤災害と認められる可能性が高いでしょう。なお、美容院に2時間以上いたとのことですが、混んでいた場合などは十分にあり得ることなので、このケースの場合、通勤災害の判断において特に影響はありません。

Q2

営業社員のBはあわてて会社を飛び出しました。今日は会社の同期と、会社の最寄り駅の駅ビルにある居酒屋で飲み会を開くことになっていたのですが、予想以上に残業が長引いて1人だけ遅れてしまっていたからです。Bは早く店に着こうと焦っていたため、誤って歩道橋の階段を踏み外して足を捻挫してしまいました。このケースは通勤災害になるのでしょうか?

A2

このケースの場合のポイントは、たとえ通勤経路上であっても、帰宅目的ではなく居酒屋に行く目的で会社を出た場合のケガが通勤災害として認められるかどうかということになります。
会社の帰りに居酒屋に行くこと自体は中断にあたりますので、居酒屋に着いた後のケガ等が通勤災害と認められることは原則としてありませんが、たとえ居酒屋に行く目的で会社を出たとしても、通常の通勤経路を通っている間は中断とはみなされません。したがって、このケースは通勤災害と認められることになります。

Q3

新興住宅地に念願のマイホーム(庭付き一戸建て)を手に入れたC課長は、今日もすがすがしい気分で玄関のドアを開けて出勤しました。ところが、玄関から表門までの間に敷いてある敷石が昨夜の雨で濡れており、その上で足を滑らせて腰を強く打ってしまったのです。このケースは通勤災害になるのでしょうか?

A3

「通勤」とは、「住居」を出た時点から通勤という行為が始まると考えられていますので、このケースの場合、どこからが通勤とみなされるのか、つまり「住居の境界」がどこになるのかが通勤災害を判断する重要なポイントになります。
 一戸建ての住居の場合、通常、門(門扉)が住居と通勤経路の境界となり、庭や玄関口などの敷地内は住居であるとされるため、このケースは通勤中の事故とはみなされず、残念ながら通勤災害とは認められません。
 一方、アパートやマンションなどの集合住宅の場合、階段やエレベーター、エントランスホールなどは共有部分であるため、住居とはみなされません。したがって、自室の玄関ドアが住居と通勤経路の境界となり、階段やエレベーターなどの共有部分で起きた通勤中の事故については通勤災害になります。

| 戻る |

Copyright(C) 1998-2003 CommunicationScience Co.,Ltd All Rights Reserved