身元保証の取り扱いに関するQ&A
平成23年6月25日 発行

会社が社員を雇う際に、身元保証書を提出させることは広く行われています。社員が業務に関連して会社に損害を与えた場合、第三者である身元保証人が社員と連帯して、その損害を賠償することになります。しかし、会社に監督上の過失があれば身元保証人の責任は軽減されます。今月号では、身元保証についてQ&Aを交えて解説します。

1.身元保証に関する法律のポイント

身元保証書を提出することにより、会社と身元保証人との間に「身元保証契約」が成立します。ただし、身元保証人が不当に重い責任を負うことのないように「身元保証ニ関スル法律」により、各種の規制が加えられています。

@ 身元保証契約の有効期間は、期間の定めのない場合は3年間期間を定める場合は最長5年間です。
・身元保証契約の更新を行っていない場合は、有効期間後の社員の不正行為に対し賠償を請求できません。
(継続させる場合は改めて身元保証書を提出してもらう必要があります)
・身元保証契約に自動更新の規定を設けても、実態として身元保証人に保証を続けるかどうかを検討する余地がない場合、無効となる可能性があります。(実質的に自動更新はできないということになります)
 
A 会社は社員を経理部など責任が重くなる部署に配置転換した場合や、管理職に昇進して責任の範囲が大きくなる場合など、身元保証人に責任がおよぶ恐れがあるときは、遅滞なく身元保証人に通知しなければなりません
 
B 損害賠償責任および賠償額は、社員に責任があるものに限られ、下記の事項その他を考慮した上で、裁判所が判断します。
(賠償限度額を損害額の2割〜7割程度までと判断したケースがありますが、6、7割は特殊なケースといえます。)
・社員の監督について、会社側に過失があったかどうか
・身元保証契約時の状況や、身元保証を引き受ける際に会社から十分な説明を受けているかどうか
・社員の任務や身分に変化があったかどうか   など

2.身元保証に関するQ&A

【Q1】身元保証書の提出時期はいつですか?
 
【A1】入社時に提出させることが一般的です。
 身元保証書の提出時期は法令では特に規定されていませんので、採用内定直後や採用してから数年経った後に提出を求めることも可能です。ただ、一般的には入社時に提出させることが多いです。

【Q2】身元保証人の賠償責任が認められたケースを教えてください。
 
【A2】貴金属宝石類の販売員が盗難にあったケースで、身元保証人に損害額の2割の賠償責任があるとした判例があります。
 
 このケースは、貴金属宝石類の販売会社に勤める営業社員が、営業先の宝石店で業務中に宝石類が入った鞄を盗まれたことについて、身元保証人の賠償責任が争われました。
 
 鞄を盗まれたこと自体は営業社員の不注意によるものであり、社員に責任がある損害のため身元保証人も連帯して賠償する責任があると判断されましたが、会社が宝石類を盗難保険に入れていなかったため、会社側にも過失があったと認められました。
 
 その結果、営業社員に請求できる損害賠償の範囲は損害額の5割とし、身元保証人が連帯して賠償すべき範囲はその額の4割(=損害額の2割)と判断されました。
【Q3】退職後に元社員が行った不正行為の損害賠償を身元保証人に求めることができますか?
 
【A3】身元保証契約は雇用契約とともに終了すると考えられるため、身元保証人に賠償を求めることはできません。
 
 判例では、身元保証契約は社員が在職中の期間のみ有効であり、雇用契約の終了とともに身元保証契約も終了するとしています。(身元保証責任に制限を加えるため)
 
 したがって、元社員本人に賠償責任を請求することは可能ですが、身元保証人には賠償を求めることはできません。
 
 なお、不正行為による損害が退職直後に発覚した場合に、不正行為が行われた当時の身元保証人へ賠償を請求することは可能です。

【Q4】どのような人物を身元保証人にすれば良いですか?
 
【A4】保証能力のある成年者がふさわしいとされています。
 
 身元保証人の条件は、法令では特に規定されていません。そのため、身元保証人の対象者や人数については、会社が独自に基準を設けることができます。(保証人を別生計や別世帯に限定することや、2人以上の保証人を求めることなど)
 
 なお、一般的な保証人の条件として、民法450条では@行為能力があり、A弁済する資力を持っている者であることと定めています。

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