個人と請負契約を結ぶ場合の注意点
平成23年10月25日 発行

会社が個人と請負契約を結ぶ場合、労働基準法や労働保険、社会保険等が適用されず、その分のコストが発生しません。ただし、書面上は請負契約であっても、実態が労働契約の場合は実態で判断されることになります。今月号では個人と請負契約を結ぶ場合の注意点をQ&Aで解説します。

Q.1 工場内の製造業務を個人に依頼したいが、請負契約は可能か?
A.理論的には可能ですが、実際には困難なケースが多いでしょう。

 請負かどうかは単なる契約書上の問題ではなく、実態によって判断されます。形式上「請負契約」としていても、例えば請負人が以下の@〜Bなどにあてはまる場合は、労働者とみなされる可能性は高くなります。
@依頼を受けた業務を受諾する義務がある
A業務遂行方法について細かく指示を受けている
B業務遂行時間や場所等が規定されている

 請負契約にすると、会社にとっては労働基準法や労働保険、社会保険等の適用を免れるという効果がありますが、一方で、労働契約とは異なり、請負人に対して細かい指揮命令を行ったり、服務規律に従わせるということも出来なくなります。

【請負契約とは】
 当事者の一方が相手方に対し、ある仕事を完成させることを約束し、相手方がその仕事の結果(成果)に対して報酬を支払う約束をする契約のことです。請負は仕事の完成を目的とするものであり、労務の提供を目的とするものではありません。そのため、仕事の遂行方法については注文主の指図を細かく受けないのが原則であり、仕事が完成しなければ報酬の支払いも受けられないことになります。

Q.2 定年退職した元社員に、それまでと同じ働き方をしてもらう場合でも請負契約を結ぶことはできるのか?
A.定年前と同じ働き方であれば、たとえ形式上「請負契約」としても、実態は労働者として、労働基準法や労働保険、社会保険等は定年前と同じように適用されることになります。

 定年を機に働き方を変え、「依頼を受けた業務を受諾する義務がない」、「業務遂行方法について指示を受けない」、「業務遂行時間や場所等が規定されていない」ということであれば、実態としても請負契約とみなされる可能性は高くなりますが、同じ働き方であれば、契約形態を請負としても、実態は労働契約とみなされることになります。

【定年後に嘱託契約をする場合はどうか】
 定年退職した者を対象に、一定期間の「嘱託契約」を結ぶ会社がありますが、「嘱託」という立場であっても、働き方がそれまでと変わらないのであれば労働基準法や労働保険、社会保険等の取り扱いもそれまでと変わらないことになります。
Q.3 請負契約にすれば、報酬を100%歩合制にしても良いのか?
A.実態として請負契約であれば、報酬を100%歩合とすることも可能ですが、労働契約とみなされた場合には最低賃金法や労働基準法の適用を受けることになります。

 形式上「請負契約」であっても、実態は「労働契約」とみなされた場合は、仕事の成果にかかわらず、少なくとも最低賃金法に定める賃金額以上の賃金を支払う必要があります。また、労働基準法に定める「出来高払い制の場合の保障給」の適用も受けることになります。

【出来高払い制の場合の保障給とは】
 労働基準法では「出来高払い制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならない」と定めています。

 「一定額の賃金」について、労働基準法には特に定めがないため、平均賃金の60%程度を保障することが妥当とする考え方と、最低賃金以上であればよいとする考え方があります。いずれの考え方を取るにしても、労働時間に応じた賃金を支払う必要があることには変わりありません。

Q.4 個人と請負契約を結ぶときに気をつけなければならないポイントは?
A.Q.1の@〜Bにあてはまらないよう、労働者性が認められる危険性を少なくし、書面上だけでなく、実態として請負契約と認められる条件で契約を結ぶ必要があります。

 請負契約と認められるためには、次のイまたはロのいずれかに該当し、単に肉体的な労働力を提供するのではないことが重要です。

イ.自己の責任と負担で、機械や設備、器材(業務上必要な簡易な工具は除きます)、材料等を準備し、業務を処理すること
ロ.自ら行う企画または自己の有する専門的な技術・ 経験に基づいて、業務を処理すること

 労働者性が争われた裁判例の多くは、「請負契約の解除」、「業務中の負傷や病気の発生」を発端としています。そのため、請負契約を結ぶ時は傷害保険や所得保障型の保険に加入することを条件にするなど、紛争が発生するリスクを少なくすることも重要なポイントになります。

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