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精神障害の労災認定基準の見直しについて

平成24年3月25日  発行

近年、業務の心理的な負担による精神障害の労災請求件数が大幅に増加したことに伴い、今までより審査を迅速かつ効率的に進めるため、精神障害の労災認定基準が平成23年12月に見直しされています。今月号では、新たな労災認定基準の見直しされたポイントについて解説します。

【見直しされた労災認定基準のポイント】

  • 業務による心理的負荷の評価方法の改善
    • 認定における「心理的負荷評価表」が見直され、判断しやすい内容となりました。
    • これまで明示されていなかった長時間労働の評価基準について、具体的な時間が明示されました。
    • 評価の期間について、いじめやセクハラの場合には原則(発病前6ヶ月間)より前の期間も対象となりました。
  • 審査方法の改善
    • これまで全事案について精神科医の専門部会による合議にかけていたものが、判断の難しい事案のみに限定されました。

【具体的な見直しの内容】

①業務による心理的負荷の評価方法の改善
これまでの判断指針 新しい認定基準
評価方法 2段階による評価
出来事の評価出来事後の評価総合評価
1段階による評価
出来事の評価+出来事後の総合評価
特別な
出来事
  • 極度の長時間労働
  • 心理的負荷が極度のもの
  • 極度の長時間労働→月160時間程度の残業時間と明示
  • 心理的負荷が極度のものに、強姦やわいせつ行為等を明示
具体例 心理的負荷評価表には記載なし 「強」「中」「弱」の3段階で心理的負荷の具体例を例示
労働時間 恒常的な長時間労働を除き、具体的な残業時間数については定めなし 強い心理的負荷となる残業時間数を明示
  • 発病直前の連続した2ヶ月間に、1月当たり約120時間以上
  • 発病直前の連続した3ヶ月間に、1月当たり約100時間以上
  • 「中」の出来事の後に、月100時間程度    など
評価期間 例外なく、発病前の約6ヶ月以内の出来事のみを評価の対象 セクシュアルハラスメントやいじめが長期間継続していた場合には、発病前6ヶ月よりも前の開始時点から評価の対象とする
複数の
出来事
一部を除き具体的な評価方法の定めなし 具体的な評価方法を明示
  • 強+中/弱 →  強
  • 中+中      →  強または中
  • 中+弱      →  中
  • 弱+弱      →  弱
※出来事の数や内容等により総合判断
発病者の
悪化
すでに発病していた場合には、悪化した場合であっても労災の対象としない 発病後であっても、特に強い心理的負荷で悪化した場合には、労災の対象とする
②審査方法の改善
これまでの判断指針 新しい認定基準
医師の意見 精神科医の専門部会ですべての事案を協議 判断が難しい事案のみを協議
調査 業務以外の要因の詳細な調査を行う 業務以外の要因の調査を簡略化

【新たな心理的負荷評価表の例】※例はいずれも通常は「中」と判断されるものです。

平均的な心理的負荷の強度 心理的負荷の
総合評価の視点
心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」と判断する具体例
具体的な出来事 心理的負荷の強度
顧客や取引先から
クレームを受けた
     
  • 顧客・取引先の重要性、要求の内容等
  • 事後対応の困難性等
【「弱」になる例】
顧客等からクレームを受けたが、特に対応を求められるものではなく、取引関係や、業務内容/量に大きな変化もなかった
【「中」である例】
業務に関連して、顧客等からのクレーム(納品物の不適合の指摘等その内容が妥当なもの)を受けた
【「強」になる例】
顧客や取引先から重大なクレーム(会社の信用を著しく傷つけるものなど)を受け、その解消のために他部門や別の取引先と困難な調整に当たった
同僚とのトラブルがあった      
  • トラブルの内容・程度、同僚との職務上の関係等
  • その後の業務への支障等
【「弱」になる例】
業務をめぐる方針等において、同僚との考え方の相違が生じた(客観的にはトラブルとはいえないものも含む)
【「中」である例】
業務をめぐる方針等において、周囲からも客観的に認識されるような対立が同僚との間に生じた
【「強」になる例】
業務をめぐる方針等において、周囲からも客観的に認識されるような大きな対立が多数の同僚との間に生じ、その後の業務に大きな支障を来たした