海外派遣者の労災保険特別加入について

平成25年11月25日  発行

労働者災害補償保険(以下、労災保険)は、本来、日本国内の事業場に適用され、そこに就労する労働者が給付対象となります。しかし、国内で事業を行う事業主(有期事業を除く、以下同じ)から転勤等で海外の事業場へ派遣される場合に『特別加入』をすることにより、海外派遣者についても労災保険が適用される制度が設けられています。今月号では、海外派遣者の特別加入についてその概要を説明いたします。

1.特別加入対象者

特別加入することができるのは、海外の事業場で労使関係が成立し、以下(1)~(3)のいずれかに該当する場合です。

(1) 日本国内で事業を行う事業主から派遣され、海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業など海外で行われる事業に従事する労働者

(2) 日本国内で事業を行う事業主から派遣され、海外にある中小規模の事業(図1参照)に従事する事業主及びその他労働者以外の人

派遣される事業の規模の判断については、国ごとに企業を単位として判断します。

例えば、日本国内の事業場と海外の事業場で日本国内の労働者も含めた労働者数が図1の規模を超える場合であっても、派遣先の国の事業場において図1の規模以内であれば、特別加入する事ができます。(下記の例を参照)

例1 サービス業 国内事業場労働者数:150人 海外事業場労働者数:120人
→特別加入できません

例2 小売業   国内事業場労働者数:700人 海外事業場労働者数:40人
→特別加入できます

業  種 労働者数
金 融 業 50人以下
保 険 業
不 動 産 業
小 売 業
卸 売 業 100人以下
サービス業
上記以外の業種 300人以下

図1 中小事業と認められる規模

(3) 独立行政法人国際協力機構など開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人

2.海外出張者と海外派遣者の労災保険の適用

海外『出張』の場合は、特別な手続きを必要とせず、国内の事業場の労災保険の適用により給付を受けられることができますが、海外『派遣』の場合は、特別加入の手続きを行っていなければ、労災保険の給付は受けられません。

(1) 海外出張者(国内の事業場の労災保険から給付を受けられる)
単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場からその事業主の指揮に従って勤務する労働者

(2) 海外派遣者(労災保険の給付を受ける為には、特別加入の手続きが必要)
海外の事業場に所属して、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者またはその事業場の事業主及びその他労働者以外の人

海外出張と海外派遣の一般的な例示は、右図のようになります。

区分 海外出張の例 海外派遣の例



1 商談 1 海外関連会社(現地法人、合弁会社、
2 技術・仕様などの打合せ 提携先企業など)へ出向する場合
3 市場調査・会議・視察・見学 2 海外支店、営業所などへ転勤する場合
4 アフターサービス 3 海外で行う据付工事・建設工事(有期事業)
5 現地での突発的なトラブル対処 に従事する場合(統括責任者、工事監督者、
6 技術習得などのために海外に赴く場合 一般作業員などとして派遣される場合)

3. 留意点

海外派遣者の補償の範囲に関して、赴任途上における災害は、以下(1)~(4)の全ての要件を満たす場合に業務災害と認められます。

(1) 海外派遣を命じられた労働者が、その転勤に伴う移転のため転勤前の住居等から赴任先事業場に赴く途中で発生した災害であること

(2) 赴任先事業主の命令に基づき行われる赴任であって、社会通念上、合理的な経路及び方法による赴任であること

(3) 赴任のために直接必要でない行為あるいは恣意的行為に起因して発生した災害でないこと

(4) 赴任に対して赴任先事業主より旅費が支給される場合であること

※ 派遣先事業場からの国外出張については、国内の事業場からの海外出張の場合と同様の考え方によって業務災害であるかどうか判断されます。

※ 他人の暴行による災害については、私怨による犯行など一定のものについては、業務を行っていた場合におけるものでも、保険給付を受けられないことがあります。