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給与カットについて 平成14年8月25日 発行

 社員に対して支払う給与は、労働基準法によりその全額を社員に支払わなければならないと定められています。ただし社員が遅刻・早退・欠勤をして、その分を給与カットすることは、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき可能です。しかしこの場合の給与カットは、減給の制裁でない限り、あくまでも不就労時間分に相当する給与だけをカットするものでなくてはなりません。今月号では給与カットについて Q&A方式で解説します。

 

遅刻・早退の時間が30分未満であっても、30分単位で給与カットすることはできるか?

 
例えば10分の遅刻・早退をした場合に、30分の遅刻・早退として取り扱い、30分に相当する給与額をカットすることは違法となります。なぜなら遅刻・早退・欠勤に対する給与カットは、あくまでも不就労時間分に相当する給与額でなければならず、これでは実際に就労した20分に相当する給与額もカットとなるため、給与の全額払いの原則に反するからです。 ただし不就労時間や給与カット額の端数を切り捨てて、社員にとって有利になる方法を取ることは問題ありません。

ある1日において1時間遅刻し、1時間残業した場合の給与計算はどうなるか?

 
1時間の遅刻については、ノーワーク・ノーペイの原則に基づいて、遅刻した1時間分に相当する給与カットをすることに問題はありません。 1時間の残業については、時間外労働の割増賃金の支払は必要なく、1時間分に相当する給与額を支払えばいいことになります。なぜなら時間外労働の割増賃金が必要となる時間は労働基準法により法定労働時間、つまり1日8時間または1週40時間を超えた時間と定められているからです。実際この日に勤務した時間は8時間となるため、1時間の遅刻は1時間分の給与カット、1時間の残業は1時間分の給与を支払うことになり、結果として差引ゼロになります。

欠勤について給与控除する場合の計算方法は?

 
欠勤日に対する給与カットについて、法律上明確な定めはありませんので、次の3パターンが考えられます。

いずれの方法でも問題ありませんが、どのような計算方法で 給与カットを行なうかについて、あらかじめ給与規程等で明確に定めておく必要があります。

※ 月給制の場合

(1)欠勤1日当たりの額=下記単価×1日の所定労働時間数
 <1年のすべての月の所定労働時間数が同じ>
 月給÷1カ月の所定労働時間数
 <月により所定労働時間数が異なる>
  月給÷1カ月の平均所定労働時間数
(2)欠勤1日当たりの額=下記の額
  月給÷その月の所定労働日数
(3)欠勤1日当たりの額=下記の額
  月給÷1カ月の平均所定労働日数

欠勤について賞与からもカットすることは可能か?

 
一般的に賞与は、支給対象者の範囲、支給方法、支給基準等を労使間で自由に決定することができます。賞与の支給基準において、賞与算定期間の出勤成績を大きな判断要素とし、その出勤成績に基づいて支給される性格の賞与であって、欠勤1日について賞与の1日分をカットするというものでれば、欠勤についてのカットは可能です。

ただしその額はノーワーク・ノーペイの原則に基づく範囲内でなければなりません。例えば、賞与算定期間に欠勤を1〜2日しただけで賞与額を2割カットしたり、まったく支給しないといった方法は、ノーワーク・ノーペイの原則の範囲を大きく超えたカットになるためできません。

年俸制でも欠勤控除できるか?

 
年俸制とは、社員の成果や業績に応じて給与額を決定する制度ですので、多少の不就労については給与カットを行わない方法が年俸制の趣旨に本来合っているといえます。

ただし遅刻、早退、欠勤が日常化するなど、職場規律上望ましくないと考える場合には、年俸制でもノーワーク・ノーペイの原則は適用されますので、取り決めによって欠勤、遅刻、早退に対しての給与カットは可能です。

給与カット額の計算方法は、欠勤1日に対して年俸額を年間の所定労働日数で割った額でカットする方法が一般的といえますが、この年俸額に賞与部分を含めて算定するかは取り決めによるので、給与規程等で明確に定める必要があります。

欠勤日について通勤費を控除できるか?

 
通勤費の支給方法について、会社の給与規程等でどのように定めているかによります。出勤日数に応じて通勤費を支給している場合は、欠勤日の通勤費を支給する必要はありませんが、1カ月すべて欠勤した場合は通勤費を支給しないとしている場合は、1日のみ欠勤した場合通勤費を控除することはできません。

通勤定期代として支給している場合は、欠勤1日につき、1日当たりの往復切符代を控除すると社員の負担が大きくなりますので、通勤定期代の1日に相当する額を控除するのであれば問題ありません。

また年次有給休暇取得日の通勤費ですが、通勤費が出勤したことを理由に支給するものであれば、その日の通勤費を控除することは可能です。

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