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懲 戒 処 分 の 基 礎 知 識 平成14年10月25日 発行

 遅刻や無断欠勤、業務命令違反など、社員が会社の秩序を乱す行為を行った場合、会社は社員に対してペナルティー(懲戒処分)を行うことができます。とはいっても、会社や社長の一存で無制限に処分できるわけではなく、一定のルールに従って懲戒処分をしなければなりません。今月号では、懲戒処分を行う場合に知っておかなければならないポイントについて解説します。

 

1.【 懲戒処分を行う場合に注意しなければならない6つのポイント 】
(1)懲戒処分の根拠となる規定があること
(罪刑法定主義の原則)
懲戒処分を行うには、懲戒処分の対象となる行為と、その行為に対する懲戒処分の種類を就業規則等にあらかじめ定めておかなければなりません。
(2)二重に処分できないこと
(一事不再理の原則)
1つの違反行為に対しては、1回の懲戒処分しかすることができず、1つの行為を二重に処分することはできません。
(3)遡って処分できないこと
(処分不遡及の原則)
懲戒処分は、懲戒処分の規定が設けられる以前の行為に対して、遡って適用することはできません。
(4) 処分が一定していること
(処分平等の原則)
同程度の違反があった場合、それに対する懲戒処分は、同一の種類、同一の程度のものでなければなりません。
(5)違反と処分のバランスが取れていること
(処分相当性の原則)
懲戒処分の種類や程度は、違反行為の内容や程度などと比較して、重すぎたり軽すぎたりせず、相当なものでなければなりません。
(6)処分に当たり適正な手続きが取られていること
(適正手続きの原則)
懲戒処分を行う場合には、適正な手続き(本人に弁明の機会を与える、処分に対する不服があれば、それを公正に検討するなど)にのっとって行わなければなりません。

2.【 主な懲戒処分の種類と内容 】
譴  責 始末書を提出させて将来を戒める。
減  給 始末書をとり、1回の事案につき平均賃金の半額を超えない範囲で、賃金から制裁として一定額を差し引く。(ただし、減給となる事案が1賃金支払期間内に複数ある場合には、減給総額が1賃金支払期における賃金 の10分の1を超えることはできません)
出勤停止 始末書をとり、一定期間(1週間程度)出勤を停止して欠勤扱いとし、その期間中の賃金は支給しない。
諭旨解雇 退職願の提出を勧告して退職させる。(これに応じない場合には懲戒解雇とするのが一般的です)
懲戒解雇 30日前に予告をするか、または30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支給して即時解雇する。(予告日数は解雇予告手当を支給した日数分だけ短縮することができます。また、労働基準監督署長の解雇 予告除外認定を受けた場合に限り、上記の手続きなしに即時解雇することができます)
※このほかの懲戒処分として、降職・降格などがあります。

3.【 懲戒処分に関する具体的な取り扱いQ&A 】

懲戒解雇ならば解雇予告などの手続きは不要か?

 
例え懲戒解雇であっても、解雇をする場合には、30日前に予告をするか、または30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支給しなければなりません。 労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けた場合に限り、上記の手続きなしに即時解雇することが可能になりますが、横領や傷害など、刑法の犯罪に該当するような重大で悪質な行為があった場合等でないとこの認定は下りず、会社で定めた懲戒解雇事由とは必ずしも一致しませんので注意が必要です。

始末書の提出を拒否した者を懲戒処分できるか?

 
始末書は、違反行為の事実などの報告書としての意味を持つとともに、違反者がその行為について謝罪の意思表示を行うためのものです。

会社が、社員に始末書の提出を求めること自体は違法ではないとされていますが、業務命令として始末書の提出を強制することや、始末書を提出しないことを理由に新たな懲戒処分をすることはできないとされています。

減給の限度を超える複数の懲戒処分があった場合には?

 
減給となる事案が1賃金支払期間内に複数ある場合には、減給の総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えることはできません。 しかし、この限度はあくまでも1賃金支払期に対するものですので、減給の総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超える場合において、その月は10分の1までの減給を行い、10分の1を超えた部分を翌月以降の賃金や賞与から控除することは可能です。

なお、懲戒処分として出勤停止が命じられた場合において、出勤停止期間中に賃金が支払われないことによる賃金の減額は、減給には該当しません。

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