TOP > 年次有給休暇の時季指定と時季変更権  (労務情報NO.104)

 

年次有給休暇の時季指定と時季変更権 平成14年12月25日 発行

退職前に残りの有休の全てを請求されたが与えなければならないのか?

 
会社に認められている時季変更権は、退職予定日を越えて行使することはできないとされています。 したがって、退職の申し出の翌日から退職日までの全期間に、残りの有休を全て利用したいという請求があった場合に、時季変更権の行使はできず、社員の請求どおりに有休を与えなければならないことになります。 業務の都合上、会社としてどうしても業務の引継ぎなどをしてもらいたい場合には、退職する社員と話し合いをし、同意を得た上で、引継ぎ終了後に残りの有休を全て消化し終わった日を退職日とする(退職日を遅らせてもらう)といった対応が考えられます。

半日単位での取得請求に応ずることは可能か?

 
原則として有休は労働日単位で与えられるものであり、労働日とは暦日によるものとされています。

しかし、社員が半日単位で有休を取りたいといった場合に、会社がこれを認めることは差し支えなく、半日単位であれば個々人の具体的な請求に応じて取得させることができます。(ただし、半日有休の取得を強制することはできません)

この場合、1日を半分に分ける方法を午前と午後で区切るか、あるいは労働時間で区切るかといった、具体的な定めをしておく必要があります。

なお、法定の日数を超えて与えている有休については、就業規則などに定めがあれば、時間単位での取得や、一定の日数は半日単位でしか取得できないなどの制約を設けることができます。

時季変更権を使う場合の条件はあるか?

 
会社が時季変更権を使えるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られています。

この「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、その会社ごとに様々な事情を考慮して客観的に判断されるものとされていますが、会社側ができる限りの配慮を尽くしても代わりの社員を用意することができない場合など、相当な努力をしても避けられない場合に限られます。

したがって、配慮を尽くさずに、ただ単に忙しくて人手が足りないことや、恒常的な人手不足を理由として時季変更権を使うことはできませんので注意が必要です。

前日までの請求を義務づけられるか?

 
就業規則で「事前に書面により申請する」といった手続きを定めている場合であっても、その手続きに反したことのみを理由に有休の請求を拒否することはできません。

しかし、取得日当日の請求については、すでにその日が開始されていることから、事後請求とみなされる余地があり、一般的には認めなくても差し支えないとされています。(病気、ケガなどにより、結果として事後請求となってしまった場合には有休の取得を認めるケースもあります)

長期にわたる有休の請求に時季変更権を行使することはできるのか?

 
社員が前もって、会社との調整をしないで長期間(例えば1カ月程度)の有休を請求した場合、会社の裁量によって有休取得の時期や期間を修正・変更できるとされています。

ただし会社側が状況に応じた配慮をしなかった場合などは、時季変更権を使うことが違法とされる場合があります。そのため、「長期の取得であること」を理由に認めないということはできないことになりますし、社員が前もって調整をせずに、会社に長期間の有休を請求した場合でも、事業の正常な運営に支障が出る可能性が低ければ、請求どおりに取得させる必要があります。

したがって、就業規則などに、長期間有休の取り扱い(例えば、5日以上連続した有休を取得する場合には少なくとも1カ月以上前に申し出るなど)を規定しておくことが重要になります。

社員の請求に関係なく欠勤期間に有休を充当できるか?

 
計画的付与制度(労使協定を結び、会社が有休の付与日を指定する制度)を除き、有休は、社員が指定した日に利用させなければならないとされていますので、会社が一方的に欠勤日に有休を充てることはできません。

これは、就業規則などで、有休を全て消化してから休職前の欠勤期間を開始することを定めている場合においても同様で、有休を使わずに欠勤扱いにしてほしいと言ってきた社員については、直ちに欠勤期間が開始されたものとして取り扱う必要があります。

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