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第三者行為災害をめぐる問題 平成15年7月25日 発行

社員が業務中または通勤途中に事故に遭い、それが第三者の行為による場合は第三者行為災害とされ、被災した社員は第三者に対して損害賠償の請求を行うことができます。そのため、労災保険からの給付を受けようとする場合、第三者から受ける損害賠償と調整されることになります。(被災した社員は、会社を通じて労働基準監督署に第三者行為災害である旨の届を提出しなければなりません) 今月号では第三者行為災害の例を挙げ、それぞれのケースごとに解説いたします。

 


<ケース1>社員が無断で社有車を利用して事故を起こした場合の会社の責任は

社員が事故を起こした場合に、会社の責任が問われるケースは次の二つです。
・使用者責任 民法により、社員が第三者に損害を与えた場合には、使用者として損害賠償責任を負うというもの
・運行供用者責任 自動車損害賠償法により「自己のために自動車を運行の用に供するものは、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」というもの

  A ほぼ運行供用者責任が認められる
B 運行供用者責任が認められる可能性が高い
C 場合によっては運行供用者責任が認められる
D 原則として運行供用者責任は否定される
<会社の運行共用者責任の度合い>
  社有車 業務利用の
社員のマイカー
通勤用の
社員のマイカー
業務中 A A B
業務中の私用中 A A C
出勤・退勤中 A B C
私用中 A C D
ケース1のように社員が勝手に社有車を持ち出した場合でも、会社の車両管理に問題があるとされる可能性が高く、短時間社有車を持ち出した程度では会社の運行供用者責任は免れません。 社有車を使用していた社員が事故を起こした場合はもちろんのこと、マイカーを業務や通勤に使用して起こした事故についても、 ほぼ全てのケースで会社に何らかの賠償責任があるとされます。したがって、社有車(マイカーの業務使用および通勤使用を含む)の取扱いについて車両規程などに厳格なルールを定めておくことが重要になります。

<ケース2>通勤途中に車にはねられて怪我をした場合

自賠責保険(共済を含む、以下同じ)、労災保険の両方に対して保険給付の請求ができます。ただし損害が二重にてん補されることを避けるために自賠責保険と労災保険との間で調整が行われ、原則として自賠責保険の支払いが先に行われます。

<手続きの流れ>
調整されるのは同一の事由(治療、休業補償など)に限られ、慰謝料は調整の対象とはなりません。
◎加害車両に対人賠償の任意保険がかけられており、自賠責保険を超える部分について既にその任意保険から支給が行われている場合には、労災保険からの給付は行われません。
◎被害者と加害者とが、その損害額のすべてについて示談を行い、それが有効に成立したと認められる場合も、労災保険からの給付は行われません。

<ケース3>出張先で犯罪に巻きこまれたら労災か

原則 出張中の災害については、自宅を出てから業務を終了して自宅に戻るまでの間すべてについて業務上の災害とされますが、 社員の積極的な私的行為があった場合や他人の故意による犯罪に巻き込まれた場合は業務外とされます。
例外 その地域の治安の状況、犯罪に遭う危険性の高さ等、被災場所や被災者の職務の性質、内容などを考慮して 明らかに業務との因果関係が認められるときは業務上の災害と認められることになります。
過去の判例 海外出張中に宿泊先のホテルで強盗に殺害されたケースでは、以下の点を考慮して、日本人が強盗に遭う危険性が あり、業務に内在する危険性が現実化したものとして業務上災害と認められたものがあります。
  1. 日本人旅行者に対する強盗殺人事件が発生していたこと
  2. 外国人が被害に遭う事件が発生していたこと
  3. ホテル側の宿泊者に対する安全対策が十分でなかったこと

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