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配置転換の基礎知識 平成15年8月25日 発行

配置転換とは会社の経営上の必要性から同じ会社内で社員の勤務地または職種を変更する事をいいます。 出向や転籍のように別の会社に異動させるわけではないので比較的簡単に考えられがちですが、社員の都合と会社側の都合の対立からトラブルが多い事柄でもあります。 今回は、会社はどのような場合に配置転換(以下、配転と略します)を命令できるのか等について事例を交えて解説いたします。

 

会社が配転命令を行う上での前提条件

社員の合意があること 対象となる社員個々の同意があれば一番よいのですが、それが得られない場合でも、入社時の雇用契約上配転があることに同意して入社した場合や就業規則、労働協約に配転を行う定めがある場合にも包括的に合意があるものとされます。
ただし、入社時の雇用契約上、職種・勤務地限定の合意があったと認められる場合には、個々の合意が必要になります。
労働基準法その他の法令に違反していない事 配転の目的が女性に対する差別的取り扱いや労働組合員に対する嫌がらせと判断される場合は配転命令は無効とされます。
就業規則や労働協約に違反していない事 就業規則や労働協約に「配置転換を行う場合には労働組合と協議する」などの定めがあるにもかかわらず、その手続きを行わずに配転命令を行う場合もその命令は無効とされます。
権利の乱用などに当たらないこと 業務上の必要性と配転によって社員が受ける経済的・肉体的不利益を比較して、社員が受ける不利益が社会通念上受け入れられるべき限度を超える場合には、配転命令は権利の乱用として無効とされます。

 

 

Q1. 子を養育している社員を転勤させられるか

 
転勤によって子の養育に支障が出るとして転勤を拒否したケースについては、従来は社員の不利益は受忍限度内とされ、会社の転勤命令は有効とされてきました。
しかし、今年(平成15年)4月に施行された改正育児・介護休業法により、会社側が育児や介護を行う社員に対し勤務地の変更を伴う配転を実施する場合には、育児や介護を行うことが困難にならないように配慮することが義務付けられました。
この場合の「子」とは特に規定がありませんので、民法により20歳未満の子ということになります。 したがって、今後は育児や介護を行う社員に勤務地の変更を伴う配転を実施する場合には、育児や介護を行うことが困難とならないような配慮をする必要があります。
仮に訴訟となった場合には、裁判所はこうした配慮をしたかどうかを検討した上で配転命令の効力を判断する事になります。

Q2. 配転規定がない場合でも配転を強行できるか

 
原則として、就業規則や労働協約に配転に関する明確な根拠規定がなければ、配転の都度、個別に合意を得ない限り配転を強行する事は出来ません。
ただし、就業規則や労働協約に配転に関する明確な根拠規定がない場合であっても、一定期間おきに定期的に配置転換を行ってきたという実績があり、社員もそれを認識していて、その会社の慣行として成り立っている場合などは配転命令が有効とされることがあります。
そのような慣行がない限り、やはり雇用契約における合意、または就業規則や労働協約による包括的合意がなければ社員に配転を強行する事は出来ません。

Q3. 共働きの社員に、転居を伴う配転を実施できるか

 
このような場合、社員の家族事情、通勤事情、他の社員の実情などから個別に判断されます。判例では、異動が他の社員に替え難いといった高度の必要性はもとめられていませんし、また、単に家族が別居しなければならなくなることや、単身赴任する必要が出てくるといった事情だけでは社員の受ける不利益は受忍限度内とされることがほとんどです。
まして、対象となる社員に対して会社が奥さんの転勤先での仕事を紹介する事を申し出たり、支給基準を満たしていないのに別居手当や住宅手当を支給するなどの措置を講じている場合はまず間違いなく配転命令は有効と判断されます。

Q4. 社員は配転命令を拒否できないのか

 
雇用契約上配転に関して包括的合意がある以上、社員は原則として配転命令に従わなければなりません。
ただし、以下のいずれかに該当する場合は配転命令を拒否する事が出来ます。

(1) 配転命令およびその目的が、労働基準法その他の法令に違反している場合
(2) 配転命令が就業規則や労働協約の規定に違反している場合
(3) 配転命令が公序良俗違反、不法行為、信義則違反、権利の乱用などにあたる場合

上記の条件の中で一番判断しづらいのが(3)の「権利の乱用などにあたる場合」ですが、判断基準は以下のようになっております。

(1) 業務上の必要性があるか。
(2) 人選に合理性があるか。
(3) 配転の必要性と比較して、社員の受ける不利益が多大でないか。

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