TOP > 労働基準法上の管理監督者とは (労務情報NO.113)

 

労働基準法上の管理監督者とは 平成15年9月25日 発行

最近、新聞や雑誌などで、「管理職」の範囲を広くとらえすぎたために「時間外労働の賃金不払い」の訴えを起こされている会社の記事を目にします。 労働時間の規定が適用されない「管理監督者」の適正な範囲とはどのようなものなのでしょうか。 法律では「一般的には、部長、工場長など労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされています。 ただし、部長、工場長などの地位についていても、実態が備わっていなければ管理監督者とは認められていません。  今月号では、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されない労働基準法上の「管理監督者」の適正な範囲について判例を交えて解説いたします。

 

1.管理監督者として認められる基準

(1)労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあること。
(2)労働時間、休憩、休日に関する規制の枠を超えて活動することが求められる重要な職務であり、現実の勤務状況も労働時間
    などの規制になじまないような立場
にあること。自分の勤務時間について自由裁量権を有していること。
(3)基本給、役職手当等がその地位にふさわしいものであること。ボーナスの支給率、その算定基礎となる賃金についても一般
    社員と比べて優遇されている
こと。
(4)スタッフ職の場合、経営上の重要事項に関する企画立案などの部門に配置され、ラインの管理監督者と同格以上に位置付け
    られる扱いを受けていること。(企画業務型裁量労働制により働く社員は管理監督者ではありません)

 

2.管理監督者と認められる場合に適用が除外されるもの ⇒ 労働時間、休憩、休日

労働時間 法定労働時間(1日8時間、1週40時間)の制限枠が無いので、1日10時間働いたとしても時間外労働の割増賃金(125%)は必要ありません。
深夜労働 × 深夜時間帯(原則として22時から翌日5時まで)の労働については割増賃金(25%)の支払い義務は免除されません。したがって、深夜業の割増賃金(25%)を支払う必要があります。
休憩 法律上、一般社員には8時間を超える労働をさせた場合には、その途中に1時間の休憩を与えなければなりませんが、管理監督者には仮に30分しか与えなくても問題はありません。また他の社員にあわせて一斉に与える必要もありませんし、休憩時間を自由に利用させる必要もありません。
休日 休日に労働しても休日労働として扱う必要はありません。もちろん割増賃金(135%)も必要ありません。
年次有給休暇 × 休日の規定は適用除外されていますが、年次有給休暇の規定は適用除外されていませんので、法定の年次有給休暇を与えなければなりません。

3.管理監督者についての裁判所の判断(管理監督者に該当しなかった判例)

争点: 時間外労働に対する割増賃金支払い義務があるかどうか
 
地位: 店長(レストラン)
 
理由: コック、ウェイターなどの従業員6,7名程度を統括し、 ウェイターの採用にも一部関与し、店長手当(月額2〜3万円)の支給を受けていたが、タイムレコーダーにより出退勤の時間を管理されて出退勤の自由はなく、又、仕事の内容も店長としての職務にとどまらず、コックはもとよりウェイター、レジ係、掃除等の全般に及んでいることから、店舗の経営者と一体的な立場にあるとはいえず、監督若しくは管理の地位にある者には該らないというべきである。
  (昭和61.7.30大阪地判)
 
争点: 時間外労働に対する割増賃金支払い義務があるかどうか
 
地位: 参事、係長、係長補佐などのマネージャー職
 
理由: 役職手当を受け、タイムカードによる打刻をしなくてもよく、それぞれの課や支店において、責任者としての地位にあったことは認められるが、他の従業員と同様の業務に従事し、出退勤の自由もなかったのであるから、 経営者と一体的立場にあるとまではいえず、管理監督者に該当しない。
  (平成12.6.30大阪高判)

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