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採用・試用期間に関するQ&A 平成16年4月25日 発行

 会社は、社員が入社してから退職するまでの間、さまざまな労務管理をしなければなりません。その入り口となるのが、社員を採用することや、採用直後の新入社員の取り扱いです。今月号では、採用・試用期間について、担当者として知っておかなければならない事項をQ&Aで解説します。

 

Q1.採用選考(面接)時において注意しなければならないことは?

 
社員を採用する際に、選考の過程において書類を提出させたり、面接においてさまざまな質問をしたりしますが、この部分については法律や行政指導などで「業務の目的達成に必要な範囲内での個人情報の収集」に限られるという一定の制限があります。したがって、仕事に直接関係のない個人情報や人権に関わる書類の提出、質問等をすることはできませんので注意が必要です。

【提出が制限される書類】

  • 戸籍謄(抄)本
  • 住民票(採用時に住民票記載事項証明書を提出させることは可能です)
  • 生活環境(生い立ち、家族等)、人生観、生活信条に関する作文 など

【面接時に質問してはいけない事項】

  • 女性に対してのみなされる質問(結婚・出産後も働き続けるかどうかなど)
  • 本籍・出生地、家族、住宅状況、宗教、支持政党、生活信条、人生観、社会運動、購読新聞・愛読書等に関する質問 など

Q2.内定の取り消しが認められるのはどのような場合か?

 
会社が応募者に対して内定通知を出し、応募者がこれに応じる旨の誓約書を提出した時点で、雇用契約そのものは成立します。ただし、実際に働き始める入社日以前に誓約書に記載された内定取り消し事由が生じた場合には、会社が内定を取り消すことができるという条件付きの雇用契約であるといわれています。

誓約書の内定取り消し事由としては、提出した書類に虚偽の記載があった場合や卒業できなかった場合、健康不良、会社が求める書類や研修課題等の不提出などが挙げられますが、内定取り消しが認められるかどうかは、内定当時知ることができないものであったか、社会通念等と照らし合わせて客観的に合理的かどうかで判断されますので、卒業できなかった場合以外の内定取り消しは無効とされるケースがあるのが現状です。

Q3.内定者に入社前研修を命じることができるか?

 
内定時点で雇用契約そのものは成立していますが、実際に雇用される時期は入社日であり、内定から入社日までの期間については内定者に労働義務はありません。したがって、入社前研修への参加を強制することはできず、あくまでも自由参加という形でしか入社前研修を行うことはできません。

Q4.入社前研修を行った場合の賃金の取り扱いは?

 
Q3で説明したように、入社前研修への参加を強制することは原則としてできませんが、参加を強制した場合や、強制しなくても参加しなかった者が不利益に扱われたり入社後の業務に支障が出る場合には、研修時間が「労働時間」であるとみなされる可能性が高くなり、その時間分の賃金の支払いが必要となる恐れがありますので注意が必要です。さらにこのような研修の場合、研修時間中や参加途中の事故は労災と判断される可能性が高くなります。

入社前研修への参加が自由であり、その内容も入社後の待遇や業務に関係しない場合には、研修時間中の賃金を支払う必要はなく、労災の問題も発生しません。

Q5.試用期間とはどのようなものか?

 
試用期間とは、一般的に正社員を採用する場合において、社員の適性や能力を見たうえで正式に採用するかどうかを判断するための、採用当初の一定期間を指します。

 たとえ試用期間中であっても採用していることには変わりありませんので、試用期間は勤務年数に通算されますし、労働保険や社会保険にも加入させなければなりません。

 ただし、賃金規程等に定めをしていることを条件に、試用期間中の者の賃金について、正社員と異なる扱いをすること(試用期間中は時間給制とすることなど)は可能です。

Q6.能力や適性がない社員を試用期間中に解雇することはできるか?

 
Q5で説明したように、試用期間は社員の適性や能力を判断するための期間であるため、試用期間中の解雇や試用期間満了後の本採用拒否については通常の解雇に比べて緩やかに判断されます。

 とはいえ、試用期間中であればどんな理由でも解雇できるわけではありません。解雇が認められるためには、内定取り消しの場合と同様に社会通念等と照らし合わせて客観的に合理的であることが必要です。例えば勤務不良の場合、遅刻・欠勤が多いことを注意・指導せずに、単に「試用期間中であるから」というだけで解雇をした場合には、解雇が無効とされる可能性があります。また、新卒採用の場合、適性や能力不足を補う(伸ばす)ための配慮を会社が行ったかどうかが合理性の重要な判断基準になりますので注意が必要です。

 なお、採用後14日を超えた場合には、試用期間中であっても解雇の手続き(30日前の予告等)が必要になります。

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