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自動車事故に対する会社の責任 平成17年5月25日 発行

 社員が、社有車を使用して営業活動をしている最中に交通事故を起こした場合や、マイカー通勤途中に交通事故を起こした場合、多くのケースにおいて会社に対する責任を問われることがあります。今月号では、自動車事故に対してどのような根拠で会社責任が生じるのか、ケースごとにどのような判断がされるのかについて解説します。

【 自動車事故に対する会社責任の根拠 】
⇒自動車事故が発生した場合、被害者に対して会社が負うべき損害賠償責任の根拠は、主に次の2つです。
(1)使用責任者(民法715条) まず、事故を起こした運転者に過失がある場合、運転者が民法709条の不法行為責任により損害賠償責任を負うことになります。その運転者が雇用されていて、運転が業務に関連して行われていた場合には、使用者である会社も損害賠償責任を負うものとされています。
※判例では、下請けに対する元請けの使用者責任を認めるなど、「使用者」の範囲を広く判断する傾向にあります。
(2)運行供用者責任
(自動車損害賠償保障法3条)
自動車損害賠償保障法では、自己(の利益)のために自動車を利用する者を「運行供用者」と呼んでおり、事故車両の保有者は運行供用者の典型例とされています。自動車事故により、人が死亡したりケガをした場合、運行供用者は事故によって生じた損害の賠償責任を負うことになります。
※判例では、事故車両の所有者だけでなく、車両の管理責任を負う者も運行供用者に当たるとされています。したがって、営業車をリースしている場合などにおいても、会社の責任が問われる可能性が高いといえます。
<使用者責任と運行供用者責任の違い>
 使用者責任は損害賠償一般に適用され、損害の種類は限定されていませんが、運行供用者責任は人身損害(死亡したりケガを負ったことによる損害)にだけ適用されます。

【 社有車による事故に対する会社の責任 】
具体的なケース 解  説
社員が、社内規定で運転中の携帯電話使用を禁止しているにもかかわらず、携帯電話をしながら社有車を運転して人身事故を起こした場合 業務中の社有車による事故であるため、社員の過失が大きかったとしても、使用者責任・運行供用者責任ともに認められます。
※損害の一部を社員に求償させることも可能ですが、その場合でも求償できる額は被害額の3割程度といわれています。
社員が就業時間中に、私用のために社有車を会社の許可なく使用し、人身事故を起こした場合 私的な使用や無断使用の場合であっても、会社の運行供用者の地位は失われないとされる可能性が高いため、会社は運行供用者責任により損害賠償を負うものとされます。
社員が社有車を会社に無断で持ち出し、休日にレジャーで使用している最中に人身事故を起こした場合 無断で休日に私的使用した場合であっても、会社の管理体制が不十分であったために使用され、使用する期間も短期であると判断される場合には、会社の運行供用者責任を問われる可能性が高いといえます。

【 マイカーによる事故に対する会社の責任 】
具体的なケース 解  説
業務命令によって、マイカーを使用中に運転を誤って物損事故を起こした場合 物損事故については、運行供用者責任は問われませんが、マイカーを業務使用することを指示しているので、使用者責任により会社に損害賠償義務が生じます。
許可制でマイカーの業務使用を認めていたところ、無許可の社員が無断でマイカーを業務に使用し、その途中で人身事故を起こした場合 許可された社員以外の業務使用を禁止していたとしても、実際に業務に使用していた最中の事故ですので、会社の管理体制が不十分であった場合や、以前からそのような状況を黙認していた場合などは、会社の使用者責任および運行供用者責任を問われる可能性があります。
勤務先が移転し、公共交通機関での通勤が不便になり、マイカー通勤を認めた場合に起きた通勤途中の人身事故 マイカーの業務使用を認めている会社の場合には、マイカー通勤そのものが会社の業務を行うことに当たるため、マイカー通勤途中の事故であっても業務上の事故ということになり、使用者責任および運行供用者責任が認められる可能性があります。

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