出張の取り扱いについて
平成17年9月25日 発行
日本各地の支店や店舗または海外拠点で業務を行う場合や、地方の取引先事業所において作業を行う場合など、多くの会社で「日帰り出張」や「宿泊を伴う出張」が行われています。出張をした場合、労働時間および賃金の取り扱いや、労災保険の取り扱いなどにおいて通常の勤務と異なる場合があります。今月号では、出張の取り扱いについて解説します。

1.出張の基本的な考えかた
(1) 出張とは?
社員が会社の業務を行うために、会社からの命令を受けて通常の勤務場所以外の場所で業務を行うことをいいます。 出張の命令は、原則として就業規則に定めることなく会社が一方的に出すことができますが、政治的に不安定な地域や治安が悪い地域への出張や、長期にわたる出張(海外出張の場合など)については、就業規則に規定を定めたうえで、対象者の同意を得て行う必要があります。
(2) 出張中の労働時間は?
上司が同行していた場合や、いつでも連絡できる状態にあるなど、労働時間が把握できる場合には実際の労働時間に基づき労働時間をカウントします。 労働時間が算定しがたいと認められる場合に限り、「みなし労働時間制」の考えかたを基に、原則として所定労働時間を労働したものとみなします。(ただし、出張後に会社に戻って勤務をした場合、その分の労働時間は別途計算して労働時間にカウントしなければなりません)
(3) 出張中の休日は?
出張の途中に休日がある場合、その休日は通常の休日と同様に扱われます。 したがって、出張中の休日に業務を行った場合、その日は休日労働扱いとなります。
(4) 出張中の移動時間は?
例えば前日の休日に出張地に移動する際に、業務に必要な物品の監視などの必要がある場合には、移動時間も労働時間としなければなりません。 業務に必要な物品の監視などの必要がなく、単なる移動の場合には、移動時間は直ちに労働時間とはなりません。 しかし休日の移動も出張命令に含まれるとされる場合もありますので、休日の移動について一定の出張手当(金額は通常の賃金でなくても構いません)を支給するなどの代償措置を講ずることが望ましいといえます。

2.出張時の労災の取り扱い
※労災保険が適用されるかどうかの判断は、大きく分けて(1)業務遂行性と(2)業務起因性の2つにより判断されます。
【業務遂行性】… 労働者が事業主の支配下にある状態をいい、これが認められれば労災(業務災害)となります。
出張中は、出張地で行う業務の進めかたや成果について、包括的に会社に対する責任を負っていると考えられているため、出張過程のすべてにおいて業務遂行性が認められます。 したがって、自宅から出張地に移動する際にケガをした場合であっても、通勤災害ではなく業務災害になります。
【業務起因性】… 対象となる傷病などが、業務を行っていたことを原因として発生したものであることをいいます。
出張中に発生した災害については、私的行為や恣意的な行為に基づくものでない限りは業務起因性が認められます。   したがって、業務とはまったく関係のないことをしてケガをした場合や、出張中に夜飲みに行った際に起きた事故などについては、労災が認められないということになります。

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