TOP 高年齢者雇用安定法の改正(2) (労務情報NO.139)
高年齢者雇用安定法の改正(2)
平成17年11月25日 発行
平成18年4月から、高年齢者雇用安定法が改正されます。会社は65歳までの段階的な雇用の延長に対応しなければなりません。 先月号では「高年齢者雇用安定法改正の内容」を解説しましたが、今月号では「会社が取るべき対応策」を解説します。
会社の取るべき対応策
(1) 高年齢者雇用確保措置の決定
高年齢者雇用確保措置には、(1)定年年齢の引き上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年制の廃止の3つがあります。(詳しくは先月号(1)、(2)参照)それぞれに特徴がありますが、
特徴を踏まえて一番適切な制度を決定してください。
高年齢者雇用確保措置
メリット
デメリット
定年年齢の引き上げ
・経験豊かな人材を確保できる
・雇用が安定的
・雇用が安定的
・人件費(退職金含む)が増大する
・解雇しづらい ・人事の停滞
・解雇しづらい ・人事の停滞
継続雇用制度の導入
勤務延長制度
・対象者の基準が定められる
・再雇用制度と比較して、大幅な労働条件の低下は難しい
再雇用制度
・対象者の基準が定められる
・労働条件が変更できる
・労働条件が変更できる
・労働条件の低下で、有能な人材を確保できない可能性がある
定年制の廃止
・経験豊かな人材を確保できる
・雇用が安定的
・雇用が安定的
・人件費(退職金含む)が増大する
・雇用終了が、退職申出か、解雇のみになる
・雇用終了が、退職申出か、解雇のみになる
(2)継続雇用制度の対象となる労働者の基準を定める
継続雇用制度を導入した場合、原則として希望者全員を対象としなければなりませんが、労使協定で対象となる従業員の基準を定めた場合は、
その基準を満たす者のみを対象とすることができます。(詳しくは先月号(3)、(4)参照)
(3)就業規則の変更
退職に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項であるため、就業規則を変更し、意見書を添付の上、管轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
就業規則への記載例
(継続雇用制度を導入し、労使協定で対象者の基準を定めた場合) 第○条 従業員の定年は満60歳とし、定年に達した日をもって退職とする。
但し、高年齢者雇用安定法第9条第2項に基づく労使協定の定めるところにより、次の各号に掲げる
基準のいずれにも該当する者については、65歳まで再雇用する。 なお、詳細は再雇用規定に定める。
但し、高年齢者雇用安定法第9条第2項に基づく労使協定の定めるところにより、次の各号に掲げる
基準のいずれにも該当する者については、65歳まで再雇用する。 なお、詳細は再雇用規定に定める。
- 引き続き勤務することを希望していること
- 無断欠勤がないこと
- 過去○年間の人事考課の平均が○以上であること
(4)労働条件の決定
継続雇用制度を導入する場合、定年後の労働条件を決める必要があります。下記の表を参考にして労働条件の決定を行ってください。
雇用形態
・定年前と同様に正社員として雇用 ・非正社員として雇用(嘱託社員、パートタイマー等)
労働時間
・フルタイム ・短時間勤務 ・短日数勤務 ・短時間勤務と短日数勤務の組み合わせ
賃金
賃金については以下の公的給付を考慮し、賞与や昇給、退職金もどの様にするか決めておく必要があります。
※厚生年金保険の加入は、1日又は1週間の所定労働時間が正社員の概ね4分の3以上、かつ、1ヶ月の労働日数が正社員の概ね 4分の3以上の場合に義務付けられます。
高年齢雇用継続基本給付金
雇用保険の被保険者が60歳に達した後、雇用保険の失業給付を受給しないで、60歳時点の賃金に比べて75%未満になった場合に支給されます
(一定の要件があります)。支給額は最大で賃金の15%です。
在職老齢年金
60歳以降、厚生年金保険の被保険者※で、特別支給の老齢厚生年金の支給がある場合、
標準報酬月額及び標準賞与額に応じて年金額が調整されます。
調整された年金を在職老齢年金と言います。※厚生年金保険の加入は、1日又は1週間の所定労働時間が正社員の概ね4分の3以上、かつ、1ヶ月の労働日数が正社員の概ね 4分の3以上の場合に義務付けられます。
その他
福利厚生、契約更新、退職・解雇について
すべての従業員を同じ労働条件にする必要はありません。従業員のニーズに合わせ、柔軟に対応することも可能です。
(5)環境整備・人員計画
能力、技術的に優れた高年齢者を雇用することは、若手社員の育成、技術の伝承等、会社にとって様々な利益を生み出すことになります。
高年齢者雇用の利点を生かすためには、高年齢者の能力が発揮できる職場環境を整備し、高年齢者をどのように配置するか、会社全体の人員計画をしっかり立てる必要があります。