TOP > 試用期間の取り扱い (労務情報NO.147)
業務への適性や能力を判断するため、採用後の一定の期間を「試用期間」とする会社は多いようです。しかし、試用期間を設けるかどうかは法律で規制されるものではなく、雇用契約の内容によって扱いが異なります。今月号では試用期間の運用面において、最もトラブルになりやすい「期間の延長」、「本採用拒否」についてQ&Aで解説します。
Q1.試用期間とはどのようなものか?
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試用期間とは、一般的に正社員を採用する場合において、社員の適性や能力を判断するために、会社が任意で設ける採用当初の一定期間をいいます。なお、試用期間中であっても採用していることに変わりはありません。 |
◆試用期間は勤務年数に通算され、労働保険や社会保険への加入も必要。
◆賃金規程等に定めがあれば、賃金について、正社員と異なる扱いをすること(試用期間中は時給制とすることなど)は可能。
Q2.試用期間の延長はできるか?
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試用期間中は本採用後と比べて、社員としての立場が不安定であるため、むやみに試用期間の延長をすることは認められません。ただし、次に示す条件をクリアしている場合は試用期間を延長することも可能です。
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- 就業規則に試用期間を延長することがある旨の定めをしており、採用時に本人にその旨を明示していること
- 就業規則や雇用契約書に試用期間を延長する場合の理由とその延長期間を明示していること
- 延長後の試用期間が社員の適性や能力を判断するために必要な合理的な長さであること
- 延長の理由が「権利の濫用」、「公序良俗違反」、「信義則違反」にならないこと
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適性や能力の面で改善される可能性があるのであれば、試用期間の延長は有効な手段ですが、その場しのぎの延長は危険ですし、延長後に本採用に至らない確率が高いのであれば、期待を持たせてしまう分、本人にとっても良いことではありません。特に、中小企業では配置転換をする部署がない場合が多く、不要な人材を抱えておくことはできませんので、試用期間の延長に際しては、本人の適性や能力を冷静に分析したうえで結論を出す必要があります。
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Q3.能力や適性がない社員を試用期間中に解雇することはできるか?
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試用期間は社員の適性や能力を判断するための期間であるため、試用期間中の解雇や試用期間満了後の本採用拒否については通常の解雇に比べて緩やかに判断されますが、試用期間中であればどんな理由でも解雇できるわけではありません。
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★解雇が認められる場合⇒ |
- 内定取り消しの場合と同様に社会通念等と照らし合わせて客観的に合理的であること
- 就業規則などにその根拠となる規定があること
- 雇用契約を結ぶ際に明示した解雇事由に該当していること
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例えば勤務不良の場合、遅刻・欠勤が多いことを注意・指導せずに、単に「試用期間中であるから」というだけで解雇をした場合には、解雇が無効とされる可能性があります。
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新卒採用の場合、適性や能力不足を補う(伸ばす)ための配慮を会社が行ったかどうかが合理性の重要な判断基準になりますので注意が必要です。
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Q4.本採用拒否をする場合、いつまでに本人に伝えるべきか?
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採用後14日を超えた場合には、試用期間中であっても解雇の手続き(右の図の1〜3のうち、いずれかの方法)が必要になります。 |
【具体例】4/1入社で試用期間が3カ月の社員の場合 |
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5/31までに本人に本採用しない旨の通知をし、試用期間が満了する6/30で雇用契約を解除する。 |
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予告期間が30日に満たない場合は、その満たない日数分の解雇予告手当の支払いが必要。
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試用期間満了と同時に本採用拒否の通知をする場合には、30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要。
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採用から14日以内の本採用拒否 |
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労働基準法上、解雇予告を行う義務はない。 |
採用後14日を超えた日以降の本採用拒否 |
(次の1〜3のうちいずれかの方法をとる) |
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1.30日以上前の解雇予告
2.平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払い
3.上記1および2の併用 具体的には、20日前に予告して解雇する場合には、 10日分の解雇予告手当を支払えばよい。
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