派遣労働者に対する雇用契約の申込み義務について
平成19年1月25日 発行
派遣労働者(一般派遣労働者及び特定派遣労働者)を受け入れる会社(以下、派遣先)は、派遣労働者の希望を踏まえた直接雇用を促進するため、一定の場合には、派遣労働者に対して雇用契約の申込みをしなければなりません。今月号では、派遣先はどのような場合に派遣労働者に対する雇用契約の申込みが義務付けられるのかについて、Q&Aを交えて解説します。

雇用契約の申込みが義務付けられるケース
 
(1) 派遣受入期間の制限のある業務(※下図AおよびGの業務)
派遣受入期間の制限を超えた日以降も、派遣労働者を使用しようとする場合(労働者派遣法第40条の4)
(2) 派遣受入期間の制限のない業務(※下図B〜Fの業務)
同一の業務に同一の派遣労働者を3年を超えて受け入れており、かつ、その業務に新たに労働者を雇い入れようとする場合 (労働者派遣法第40条の5)
なお、派遣受入期間の制限のある業務については、(1)のほか、1年以上同一の業務に同一の派遣労働者を受け入れており、派遣の受け入れが終了した日以後、その業務に新たに労働者を雇い入れようとする場合は、1.派遣先に雇用されてその業務に従事する希望を申し出ており、 2.派遣の受け入れが終了した日以後7日以内に派遣元事業主との雇用関係が終了する派遣労働者を雇用する努力義務があります。

業務別の派遣受け入れ期間の制限

業務の種類 期間の制限
A 以下に示すB〜G以外の業務 最長3年まで(※1
B ソフトウエア開発等の政令で定める業務(いわゆる「26業務」) 制限なし
C いわゆる3年以内の「有期プロジェクト」業務 プロジェクト期限内は制限なし
D 日数限定業務(※2 制限なし
E 産前産後休業、育児休業等を取得する労働者の業務 制限なし
F 介護休業等を取得する労働者の業務 制限なし
G 製造業務(※3 平成19年2月までは1年、3月以降は最長3年まで(※1
※1 1年を超える派遣を受けようとする場合は、派遣先の労働者の過半数で組織する労働組合等に対し、派遣を受けようとする業務、期間及び開始予定時期を通知し、十分な考慮期間を設けた上で意見聴取を行うことが必要です。
※2 その業務が1カ月間に行われる日数が、派遣先の通常の労働者の所定労働日数の半分以下かつ10日以下の業務が該当します。
※3 製造業務で、かつ、B〜Fの業務に該当する場合は、B〜Fが適用されます。

雇用契約の申込み義務に関するQ&A

【Q1】
雇用契約の申込み義務に違反した場合はどうなるのか。
【A1】
都道府県労働局長が指導、助言を行った上で、雇用契約の申込みをするよう勧告を行い、それでもなお違反する場合は、厚生労働大臣が企業名の公表を行うことがあります。

【Q2】
雇用契約の申込みの際の労働条件はどのように決めるべきか。
【A2】
労働条件については、派遣先と派遣労働者との間で決められるべき事項であり、派遣就業中の労働条件や、雇い入れに係る業務に従事している他の派遣先の労働者の労働条件等を勘案して決定することが求められます。

上記(1)派遣受入期間の制限のある業務(AおよびG)について

【Q3】
派遣受け入れ期間中に派遣労働者を交代した場合であっても、雇用契約の申込み義務が発生するか。
【A3】
派遣受け入れ期間の制限に抵触することとなる場合は、個々の派遣労働者の派遣受け入れ期間を問わず、抵触日の直前に受け入れていた派遣労働者に対して雇用契約の申込み義務が発生します。

上記(2)派遣受入期間の制限のない業務(B〜F)について

【Q4】
在籍型出向を受け入れる場合も派遣労働者に対して雇用契約の申込み義務があるのか。
【A4】
一定期間経過後に出向企業へ復職することが前提となっているいわゆる在籍型出向の受け入れについては、雇用契約の申込み義務の対象となる労働者の雇い入れには該当しません。

【Q5】
新規学卒者を本社で一括採用し、研修期間中に個々の新入社員の適性を見極めた上で相応しい業務に配属する場合、その業務への配属をもって、新たに労働者を雇い入れたことになるのか。
【A5】
既に雇い入れられている労働者の異動は、その業務への新たな労働者の雇い入れにはあたりませんが、雇用契約の申込み義務を免れるために脱法的に行われていると判断されるような場合(あらかじめその業務へ雇い入れるために採用した労働者を、形式的に他の部署へ配属させた後にその業務へ異動させる場合など)は、雇用契約の申込みをする必要があります。

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