会社は社員に残業や休日出勤を行なわせたときは、その時間に対する割増賃金を支払わなければなりません。しかし、新聞でも度々報道されているとおり、大手企業でさえも割増賃金を正しく計算しているとは限りません。そこで今月号では、変形労働時間制などの特殊な制度ではない場合の原則的な割増賃金の計算方法について解説します。
例1 法定時間外残業の割増率 所定労働時間が午前9時から午後5時(休憩1時間)までの場合
17:00〜18:00 → 1時間あたりの賃金×1.00×1時間 |
法定時間内残業※1 |
18:00〜22:00 → 1時間あたりの賃金×1.25×4時間 |
法定時間外残業 |
22:00〜 5:00 → 1時間あたりの賃金×1.50(1.25+0.25)×6時間 |
法定時間外残業+深夜労働 |
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※ 1 法定時間内残業については、原則として割増賃金(25%)を支払う必要はありません。ただし、就業規則等で法定時間内の残業にも割増賃金を支払うと定めている場合は、その定めによります。
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例2 法定休日労働の割増率 午前9時から午後12時(休憩1時間)まで勤務した場合
9:00〜22:00 → 1時間あたりの賃金×1.35×12時間 |
法定休日労働※2 |
22:00〜24:00 → 1時間あたりの賃金×1.60(1.35+0.25)×2時間 |
法定休日労働+深夜労働 |
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※ 2 法定休日は週1日ですから、週休2日制のいずれか1日(土曜日など)や祝祭日に勤務させても、原則として休日労働の割増賃金(35%)を支払う必要はありません。(ただし、週40時間を超えたときの割増賃金(25%)を支払う必要が出てくる場合があります)また、就業規則等で支払う旨を定めている場合は、その定めによります。
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割増率は引上げの動きがあり、平成19年秋の国会で改正案が成立すれば、1カ月当り80時間を超える法定時間外労働について、近い将来、割増率が50%以上に引き上げられることになります。(中小企業に対しては3年間の猶予期間を設ける予定)
1時間あたりの賃金計算
時給制の場合は時給額がそのまま1時間あたりの賃金になりますが、月給制の場合でも1時間あたりの賃金を計算し、その時間単価に割増率を掛けて割増賃金を計算します。
割増賃金を計算する上での時間単価の求め方 |
月給から除外できる賃金 |
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○家族手当・扶養手当・子女教育手当 → 家族数に比例して支給されるものに限る
○通勤手当 → 交通費、距離に比例して支給されるものに限る
○別居手当・単身赴任手当
○住宅手当 → 費用に比例して支給されるものに限る
○臨時の手当(結婚手当、出産手当、大入り袋など)
○賞与など1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金 |
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例 |
基本給235,000円、精皆勤手当8,000円、家族手当20,000円、通勤手当15,000円
年間所定休日122日、1日の所定労働時間8時間の場合
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