労働契約法のポイント
平成20年2月25日 発行
「労働契約法」が平成20年3月1日から施行されます。労働契約に関する基本的なルールを定めることで、個別の労働関係の紛争解決や予防を目的としています。そこで、今月号では労働契約法のポイントを4項目に分けて解説します。

労働契約の締結

労働者と使用者※1では交渉力に差があり、また、不明確な契約内容が多かったことから、契約内容が明確化されます。

労働契約は労働者と使用者との対等な立場による合意により締結されることを明確化
労働契約締結時に使用者に書面明示が義務づけられている項目※2以外のすべての労働条件についてもできる限り書面で確認
労働契約に付随する義務として、使用者の安全配慮義務を明確化
 労働者と使用者が相互理解のうえで労働者が安心・納得して就労できるようにし、また、契約内容を確認することにより誤解が減少することを目的としています。

 労働契約法における「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいい、「使用者」とは労働者に対して賃金を支払う者をいいます。
 書面で明示すべき労働条件の範囲は次のとおりです。
@労働契約の期間 A就業の場所、従事すべき業務 B始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇 C賃金の決定、計算・支払い方法、賃金の締切り・支払いの時期 D退職
 平成20年4月1日から、短時間労働者に対しては、これらに加えてE昇給の有無 F賞与の有無 G退職金の有無を書面で明示しなければなりません。

労働契約の変更

就業規則の変更は、手続きについてのみルールがあり、内容に関するルールは
判例に任されていてわかりづらかったため、その判断基準が明確化されます。

労働契約の変更は、労働者と使用者との合意によることを明確化
就業規則の不利益変更の合理性の有無の判断基準を明文化
 @労働者の受ける不利益の程度 A変更の必要性 B変更後の就業規則の内容の相当性 C労働組合等との交渉の状況
 Dその他の就業規則の変更に係る事情 を総合考慮して判断します。
 労働契約の成立・変更の原則や、労働契約と就業規則の関係が明らかとなりました。

労働契約の継続・終了

懲戒、解雇等をめぐる紛争が多発していることから、
権利の濫用は無効であることが明確化されました。

懲戒に関し、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効という判例法理を明文化
労働基準法18条の2の規定(解雇の権利濫用は無効)を労働契約法に移行
出向に関し、その権利を濫用したものと認められる場合は無効
 不当な懲戒、解雇、出向の防止を明文化しました。

 なお、判例では、懲戒処分について下記の6つの基本原則を守ることを要求しています。
@ あらかじめ就業規則において懲戒処分の種類・程度を定めておくこと。
A 1つの違反行為に対しては、1回の懲戒処分しかできないこと。
B 懲戒処分の規定が設けられる以前の違反行為に対して、遡っての適用はできないこと。
C 同じ内容の違反について、人によって懲戒処分の内容が異なってはならないこと。
D 懲戒処分の種類・程度は、違反行為の内容や程度などと比較して、重すぎたり軽すぎたりせず、相当なものでなければならないこと。
E 本人に弁明の機会が与えられているなど、適正な手続きに従って行われること。

有期労働契約

契約期間中の解雇や契約更新の繰り返しによって、有期
労働契約者の雇用が不安定にならないようにします。

契約期間中はやむを得ない事由(天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合など)がある場合でない限り、解雇できないことを明確化
契約期間が必要以上に細切れにならないよう、使用者に配慮を求める
 有期労働契約者が安心して働けるようになります。

 ※なお、『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する告示(厚生労働省告示第12号 平成20年1月23日)』において、雇止め予告の対象の範囲を拡大することになりました。

(現行)
 雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に限り、契約期間満了日の30日前までに雇止め予告が必要です。
(追加)
3回以上契約が更新された場合も、契約期間満了日の30日前までに雇止め予告が必要となります。
(平成20年3月1日適用)

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