TOP > 有期労働契約の雇い止めについて (労務情報NO.171)
有期労働契約の雇い止めについて
平成20年7月25日 発行
期間の定めのある雇用契約を結んでいる労働者に対する雇い止めが有効と判断されるかどうかは、契約更新回数の多少や継続勤
務期間の長短という単純な基準だけで決まるものではありません。今月号では「期間の定めのある雇用契約」で雇い止めが有効、あるいは無効と判断される基準について解説します。
「期間の定めのある雇用契約」で雇い止めが認められなくなるケースとは?
例えば、一度も契約更新をしていないケースでも、契約の実態が実質的に期間の定めのない契約に類似するとして労働者に契約更新の合理的な期待が生じていることを認め、雇い止めを無効と判断した裁判例があります。
では、どのような基準で「期間の定めのある雇用契約」で雇い止めが有効と判断されるのでしょうか。裁判では、次の「判断の基準となる事項」により雇用契約を類型化し、総合的に評価して雇い止めが有効かどうかを判断しています。
|
業務の客観的内容 従事する業務の種類、内容、勤務の形態(業務内容の恒常性・臨時性、正社員の業務内容との同一性の有無など) |
|
契約上の地位の性格 契約上の地位の基幹性・臨時性、正社員の労働条件との同一性の有無など (例として、嘱託、非常勤講師などは地位の臨時性が認められます。) |
|
当事者の主観的態様 継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度など (採用に際しての雇用契約の期間、更新、継続雇用の見込みについての雇い主側からの説明など) |
|
更新の手続、実態 契約更新の状況(反復更新の有無・回数、勤続年数など)、契約更新手続の厳格性の程度(更新手続の有無・時期・方法、更新の可否の判断方法など) |
|
他の労働者の更新状況 同じ立場にある他の労働者の雇い止めの有無など |
|
その他 期間の定めのある雇用契約を結んだ経緯、勤続年数・年齢の上限設定など |
具体的には、これらの事項により、期間の定めのある雇用契約は次のA〜Dのタイプに分けられます。Dのタイプと認められた場合は雇い止めにより雇用契約は自然に終了しますが、A〜Cのどれかに該当する場合は解雇権濫用の法理の類推適用、契約更新拒絶権の濫用などの枠組みにより、権利の濫用と認められれば雇い止めは無効と判断されることになります。
したがって、A〜Cのどれかに該当する場合は、雇い止めに解雇と同程度の「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と是認することが出来る事由」があることが条件になります。
|
|
A. |
実質無期契約タイプ |
|
|
期間の定めのある雇用契約が、実質的に期間の定めのない雇用契約になっていると認められるもの |
|
|
|
|
|
B. |
期待権保護(反復更新)タイプ |
|
|
実質無期契約タイプではないが、相当程度の反復更新の実態があり、雇用継続への合理的な期待が認められるもの |
|
|
|
|
|
C. |
期待権保護(継続特約)タイプ |
|
|
実質無期契約タイプではないが、特に支障がない限り、当然契約更新されることを前提として契約が結ばれており、期間満了で契約を終了させるにはそれまでの扱いを変更して、契約を終了してもやむを得ないと認められる特別な事情が必要とされるなど、契約当初から雇用継続への合理的な期待が生じていると認められるもの |
|
|
|
|
|
D. |
純粋有期契約タイプ |
|
|
A、B、Cのどれにも該当しないと認められるもの |
|
|
|
|
|