平均賃金の基礎知識
平成20年11月25日 発行
平均賃金とは、労働基準法で定める解雇予告手当や休業補償、減給制裁の制限額を算定するときの基準となる賃金をいいます。平均賃金は通常の生活賃金をありのままに算定することを基本としており、計算する際には一定のルールがあります。今月号では平均賃金について計算例を交えて解説します。

平均賃金が使われるケース

1. 社員を解雇する場合の30日前予告に代わる解雇予告手当
(予告日数が30日に満たない場合は、その満たない日数分以上の平均賃金を支払わねばなりません)
2. 会社都合により休業させる場合に支払う休業手当 (1日につき平均賃金の6割以上を支払わねばなりません)
3. 年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金
4. 社員が業務上負傷もしくは疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償
5. 減給の制裁の制限額 (1回の額が平均賃金の半額を超えてはなりません)               など

平均賃金の算定の原則

<原則的な計算方法>
※1 算定事由の発生した日は含まず、その前日から遡って3カ月です。
ただし、賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から遡って3カ月となります。
※2 通勤手当、皆勤手当、時間外手当などの諸手当を含み、税金、社会保険料などを控除する前の額(額面総額)です。

<計算から除外される期間と賃金>

算定期間から除外される期間 賃金総額から除外される賃金
業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
産前産後休業期間
育児休業期間、介護休業期間
会社都合による休業期間
試用期間
臨時に支払われた賃金
(慶弔見舞金など)
3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
(賞与など)
通貨以外のもので支払われた賃金のうち一定範囲のもの

平均賃金の最低保障額

原則的な計算方法による額と次の最低保障額とを比較し、いずれか高い額が平均賃金となります。

(1) 時給・日給制および請負制の場合
最低保障額 = 算定期間中の賃金の総額 算定期間中に実際に労働した日数 100分の60
(2) 月給、週給と時給との併給の場合 (下記「平均賃金の計算例」を参考にしてください。)
最低保障額 = 月給部分の総額 算定期間中の総歴日数 + (1)
(3) 日給月給制で欠勤により減額された場合
最低保障額 = 欠勤しなかった場合に受けるべき賃金の総額 算定期間中の所定労働日数 100分の60

平均賃金の計算例

前提条件 算定事由発生日は3月20日。労働日数、賃金などは次の表のとおり。

期間 月分 日数(労働日数) 基本給 通勤手当 残業手当 総支給額
12月16日から1月15日 1月分 31日(19日) 250,000円 7,000円 15,624円 272,624円
1月16日から2月15日 2月分 31日(21日) 250,000円 7,000円 19,530円 276,530円
2月16日から3月15日 3月分 28日(20日) 250,000円 7,000円 7,812円 264,812円
合計 90日(60日) 750,000円 21,000円 42,966円 813,966円
※残業手当は時間数により支払われるため、最低保障額を算出する際は、月給と時給が併給される場合の計算式(2)を使います。


@ 平均賃金(原則的な計算方法)
813,966(賃金総額) 90(総歴日数) = 9,044.0666 (銭未満切捨て) 9,044円06銭
A 最低保障 a. 771,000(月給で支払われる部分の賃金総額) 90(総歴日数) = 8,566.6666 8,566円66銭
b. 42,966(時間により支払われる部分の賃金総額) 60(労働日数) 100分の60 = 429円66銭
a + b = 8,996円32銭
@とAを比較し@の方が高いため、この場合は@の計算式により算出された9,044円06銭が平均賃金となります。

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