フルタイム有期契約労働者の雇用管理について
平成20年12月25日 発行
景気低迷による非正規労働者の雇い止めや解雇が問題となっていますが、その中でも、特に正社員と同じ勤務時間の有期契約労働者(以下、「フルタイム有期契約労働者」といいます。)については、パートタイム労働法やそれに基づく支援措置の対象とされていないため、雇用管理の改善が十分ではありません。そのため、雇用管理の改善を効果的・効率的に進められるように厚生労働省はガイドラインをまとめています。今月号ではフルタイム有期契約労働者の雇用管理をする上で留意しなければならないポイントを解説します。

フルタイム有期契約労働者の雇用に関して、留意しなければならない主な項目(有期契約労働者の雇用管理の改善に関するガイドラインより)
1.安定的な雇用関係に配慮した雇用環境の整備

@契約締結時における契約期間、更新の有無の明示等 募集時における契約期間の明示(職安法5条の3)
契約締結時における契約期間の明示(労基法15条@)
更新の有無および判断基準の明示(雇止め告示1条)
A契約期間についての配慮 目的に照らして、必要以上に短い期間を定めないこと(契約法17条A)
契約更新時に、実態や希望に応じて契約期間をできるかぎり長くするように努めること(雇止め告示4条)
B雇用契約の遵守 有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約満了時まで解雇することができないこと(契約法17条@)
解雇時の予告(労基法20条@)
退職に関する事項の明示、退職時等の証明(労基法15条@、22条@A)
C雇止めの予告および雇止めの理由の明示 有期労働契約(3回以上更新し、または1年を超えて継続勤務している場合)を更新しない場合には、少なくとも30日前までに予告をすること(雇止め告示2条)
有期労働契約が更新されなかった理由について、労働者が証明書を請求した時は、遅滞なく交付しなければならないこと(雇止め告示3条)
D妊娠・出産等を理由とした不利益な取り扱いの禁止(均等法9条B)

2.労働条件等の改善のための事項

@労働条件の明示等 募集時、契約締結時における労働条件の明示(職安法5条の3、労基法15条@)
待遇の決定に当たって考慮した事項の説明(パートタイム労働法13条)
A均衡考慮の原則および仕事と生活の調和への配慮の原則 労働契約は、労使が就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結・変更すべきこと  (契約法3条A)
労働契約は、労使が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結・変更すべきこと  (契約法3条B)
B通常の労働者との均衡の取れた待遇 通常の労働者との均衡を考慮しながら、職務の内容や能力、経験等により賃金を決定するように努めること(パートタイム労働法9条@)
福利厚生施設のうち、食堂、休憩室、更衣室については、フルタイム有期契約労働者も利用できるように配慮すること(パートタイム労働法11条)
フルタイム有期契約労働者からの苦情の申し出に対して、苦情処理体制を整備するなど、自主的な解決に努めること(パートタイム労働法19条)
C就業規則の整備等(労基法89条、90条、パートタイム労働法7条)
D年次有給休暇の付与(労基法39条@〜B)
E育児休業制度、介護休業制度および子の看護休暇制度の整備等(育児・介護休業法)

3.キャリアパスへの配慮等(正社員登用)

正社員への転換を推進するため、フルタイム有期契約労働者に対して、次のいずれかの措置を講ずるべきであること
(パートタイム労働法12条@)
正社員募集を行う場合に、募集条件をフルタイム有期契約労働者にも周知すること
正社員を新たに配置する場合に、フルタイム有期契約労働者に配置の希望を申し出る機会を与えること
フルタイム有期契約労働者から正社員への転換のための試験制度を設けるなどの措置 を行うこと

4.教育訓練・能力開発の機会の付与

正社員に対して行う教育訓練で、職務の遂行に必要なものについては、職務内容が同じフルタイム有期契約労働者にも実施すること

5.法令の遵守

フルタイム有期契約労働者についても、労働者保護法令の適用があることを認識し、遵守しなければならないこと

6.法令等の周知

フルタイム有期契約労働者についても、法令等(就業規則、各種労使協定など)を周知させなければならないこと

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