年次有給休暇に関するQ&A
平成21年3月25日 発行
労働基準法に定められている休暇として年次有給休暇(以下、「有休」といいます)がありますが、会社によっては年度の初めに一斉に付与する方式を取っていたり、時効で消滅する有休を積み立てる制度を設けていたりと、有休の運用が多様化してきています。今月号では、有休の取り扱いについてQ&A方式で解説します。

Q.1 有休の発生要件である「出勤率」の考えかたについて教えてください。

A.  有休は対象期間における出勤率が「8割」以上あることで発生します。出勤率の算定にあたっては、対象期間において『出勤日数÷全労働日数』が8割以上あることが必要になります。

 全労働日数の「全労働日」とは、労働契約上、労働義務がある日、すなわち各労働者にとっての所定労働日数をいいます。したがって、休日出勤をした日は全労働日には含まれません。

 また、出勤日数の算定においては、以下の日については出勤したものとして扱わなければなりません。

@業務上の傷病による休業期間
A産前産後の休業期間
B育児・介護休業期間
C有休を取得した日

Q.2 途中で契約条件が変わり、勤務日数が少なくなったパートタイマーの有休を減らすことは可能でしょうか?

A.  途中で勤務日数が変わった場合であっても、次の基準日(有休付与日)まで付与日数を変更することはできません。

 有休を付与した後に、労働契約を変更して所定労働日数が減少した場合については、有休は継続勤務による基準日に発生するため、すでに与えた有休を契約変更後の付与日数に合わせて減らすことはできません。
 (契約条件の変更により、勤務日数が多くなった場合でも、有休の追加付与の必要はありません。)

 次の基準日が来た時点において、その時点での契約上の勤務日数に応じた有休を付与することになります。

Q.3 一時帰休日に労働者から有休の申請があった場合に、認めなければならないのでしょうか?

A.  一時帰休日の決定後であれば、労働者からの有休の申請を認めなくても良いことになります。

 有休は、労働日の労働義務を免除するものですので、労働義務のない休日などについては、そもそも取得することができません。
 会社が一時帰休日を決定した後は、その日の労働義務はない状態となりますので、有休を取得することはできず、会社は休業手当として平均賃金の6割以上の賃金を支払えば良いことになります。
Q.4 基準日を毎年4月1日に統一する場合、どのような方法を取れば良いのでしょうか?

A.  基準日を統一する方法をとる場合には、常に労働者に不利にならない形で取り扱う必要があります。

 有休は、法定どおりの付与方法をとると労働者の入社日ごと に基準日が発生し、管理が煩雑となります。この煩雑さを解消するために、基準日を統一して一斉に有休を付与することがあります。

 基準日を統一する場合、出勤率の算定や付与日などにおいて、 常に法定の基準を上回る条件とする必要があります。

【例:毎年4月1日を基準日として統一している場合】

◆平成20年8月1日に入社した者に対する有休の付与◆
平成21年2月1日に10日を付与(法定どおり)
平成21年4月1日に11日を付与(統一の基準日に前倒しして支給)

※法定どおりなら平成22年2月1日に付与する有休です。
4月1日の有休付与における出勤率(8割以上)の算定においては、前倒しした期間(H21.4〜H22.1までの期間)は出勤したものとみなして算定します。

Q.5 消化できなかった有休を積み立てておく制度があると聞きましたが、導入する場合、どのようなことが必要でしょうか?

A.  積み立てをした有休の取り扱いについて、就業規則などに規定しておく必要があります。

 有休は付与された日から2年を経過すると時効により消滅します。そのため、期間内に消化できなかった有休は毎年消滅していくことになります。

 この消化できなかった有休を一定日数まで別途積み立てておき、一定の理由・条件を満たす場合に使用できるようにする制度があり、「有休積立制度」「有休ストック制度」などと呼ばれています。

 上記制度は、法律の規定を超えるものですので、その取扱いについては労使間で自由に設定することができます。就業規則などに規定する場合には、以下のような内容を盛り込んでおくことが考えられます。

@積み立てをすることができる日数の上限
A使用することができる理由(私傷病による休業など)
B申請手続き
Cその他の条件(通常の有休をすべて消化した後に取得することなど)

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