TOP > 職場における熱中症の予防と応急処置 (労務情報NO.183)
職場における熱中症の予防と応急処置
平成21年7月25日 発行
熱中症とは、高温多湿な環境下で体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れ、体内の調整機能がうまく働かなくなることで発症する障害の総称です。特に糖尿病、高血圧症等は熱中症の発症リスクを高めると考えられており、職場ではそれを踏まえて労働者の健康を管理する必要があります。今月号は職場における熱中症の予防策を解説します。
熱中症の症状と分類
分類 |
症状 |
重症度 |
T度 |
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めまい・失神 「立ちくらみ」という状態で、脳への血流が瞬間的に不十分になったことを示し、“熱失神”と呼ぶこともあります。 |
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筋肉痛・筋肉の硬直 筋肉の「こむら返り」のことで、その部分の痛みを伴います。発汗に伴う塩分(ナトリウム等)の欠乏により生じ、これを“熱けいれん”と呼ぶこともあります。 |
● |
大量の発汗 |
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U度 |
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頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感 体がぐったりする、力が入らないなど、 “熱疲労”といわれる状態です。 |
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V度 |
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意識障害・けいれん・手足の運動障害 呼びかけや刺激への反応がおかしい、体がガクガクと引きつけがある、まっすぐ走れない・歩けないなど。 |
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高体温 体に触ると熱いという感触があり、“熱射病”や“重度の日射病”といわれる状態です。 |
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熱中症予防策
作 業 環 境 管 理 |
高温多湿作業場所では、熱をさえぎる遮へい物、直射日光・照り返しをさえぎることができる簡易な屋根、通風・冷房の設備を設ける。 |
高温多湿作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所や日陰などの涼しい休憩場所を設ける。 |
高温多湿作業場所やその近くに氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる設備を設ける。 |
水分と塩分の補給を定期的かつ容易に行えるよう、高温多湿作業場所に飲料水の備付け等を行う。 |
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作 業 管 理 |
作業時間の短縮 |
休憩時間の確保、高温多湿作業場所での連続作業時間の短縮、作業場所の変更など。 |
熱への順化 |
作業を行う者が順化していない状態から7日以上かけて熱へのばく露時間をしだいに長くする。 (ただし、熱へのばく露が中断すると4日後には順化の顕著な喪失が始まり、3〜4週間後には完全に失われます。) |
水分と塩分の摂取 |
自覚症状の有無にかかわらず、水分、塩分の定期的な摂取を指導する。 |
服装 |
透湿性、通気性の良い服装をさせ、直射日光下では通気性の良い帽子をかぶらせる。 |
作業中の巡視 |
定期的な水分や塩分摂取の確認を行うとともに、労働者の健康状態を確認し熱中症を疑わせる兆候が表れた場合は、速やかに作業を中断し必要な措置を講じる。 |
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健 康 管 理 等 |
健康診断結果に基づく対応 ※ |
異常所見がある場合には、医師等の意見を聴き、必要があれば就業場所の変更、作業の転換などの適切な措置を講じる。 |
熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患を治療中の労働者への対応 |
産業医、主治医等の意見を勘案し、必要に応じて就業場所の変更、作業の転換などの適切な措置を講じる。 |
日常の健康管理 |
睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取、風邪による発熱、下痢による脱水などは熱中症の発症に影響を与えるおそれがあるため、日常の健康管理について指導を行うとともに、必要に応じて健康相談を行う。 |
労働衛生教育 |
熱中症の症状、予防方法、緊急時の救急処置、熱中症の事例について、あらかじめ労働衛生教育を行う。 |
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※労働安全衛生法により適切な措置を講じる義務とされております。 その他の項目は、義務ではありませんが、適切な職場環境を用意するという視点から行うことが望ましいと言えます。 |
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緊急時の応急処置
<現場での流れ>
意識がしっかりしていても、体調が悪化する場合には救急隊を要請し、医療機関へ搬送するなど、臨機応変な対応が必要です。 |
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