TOP > 企業における新型インフルエンザへの対応について (労務情報NO.185)
企業における新型インフルエンザへの対応について
平成21年9月25日 発行
4〜5月にかけて、海外を中心に猛威をふるった新型インフルエンザ(当初は豚インフルエンザ)ですが、一度収束した後、8月の終わりから再び流行の兆しを見せています。今月号では企業が行っているインフルエンザへの対応について、その実態や法的解釈を解説します。(なお、統計データは(財)労務行政研究所が平成21年9月9日に発表した「企業における新型インフルエンザ対応の実態」に拠ります)
インフルエンザ対策としての備蓄状況
◆生活必需品や感染予防のための保護具(マスク)などの備蓄を行った企業は75.7%でした。マスクや消毒用アルコールはほとんどの企業が備蓄していますが、薬や食料品・日用品については、大企業と中小企業で対応に差が出ています。なお、タミフル、リレンザは医師の処方に基づく薬であり、大企業で比較的多いのは、社内に医師や医療機関を置いていることも関係していると考えられます。
【具体的な備蓄内容】(複数回答) |
(集計社数360社、%) |
区分 |
規模計 |
1,000人以上 |
300〜999人 |
300人未満 |
マスクなどの保護具 |
99.6 |
100.0 |
100.0 |
98.7 |
消毒用アルコール性手指消毒剤 |
84.8 |
87.2 |
86.7 |
79.5 |
タミフル、リレンザ(抗インフルエンザウイルス薬) |
12.3 |
26.7 |
5.7 |
5.1 |
食料品・日用品 |
18.6 |
25.6 |
17.1 |
12.8 |
その他 |
6.3 |
5.8 |
5.7 |
7.7 |
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感染が確認された社員を自宅待機とした場合の賃金等の取り扱い
◆自宅待機を命じた社員への賃金等については、支払うケースと支払わないケースの両方がありますが、支払わないと答えた企業も、そのうちの98.2%は、「年次有給休暇の取得を認める」としています。また、「賃金を通常どおり支払う」の割合が多いのは、欠勤控除がない「完全月給制」の企業や「特別休暇」で対応する企業があるためと考えられます。
【具体的な取り扱い】 |
(集計社数360社、%) |
区分 |
規模計 |
1,000人以上 |
300〜999人 |
300人未満 |
@賃金、休業手当ともに支払わない |
22.2 |
25.0 |
21.5 |
20.4 |
A賃金は支払わず、休業手当を支払う |
8.6 |
10.2 |
11.4 |
2.9 |
B賃金を通常どおり支払う(欠勤控除がない場合を含む) |
33.1 |
37.0 |
28.9 |
35.0 |
C分からない・未定 |
27.2 |
18.5 |
30.9 |
31.1 |
Dその他(休業期間に応じて、ケースバイケースなど) |
8.9 |
9.3 |
7.4 |
10.7 |
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同居家族に感染が確認された場合の社員への対応
◆同居の家族に感染が確認された場合、職場への二次感染リスクを防ぐため、何らかの形で自宅待機とする企業が全体の7割以上を占めています。企業が自主的に自宅待機を命ずるケースも3割を超えています。
【自宅待機に関する対応】 |
(集計社数360社、%) |
区分 |
規模計 |
1,000人以上 |
300〜999人 |
300人未満 |
@保健所の判断を待たずに、原則として自宅待機にする |
33.9 |
40.7 |
31.5 |
30.1 |
A保健所から外出自粛の要請が出された場合、自宅待機にする |
43.1 |
43.5 |
47.0 |
36.9 |
B特に出勤の制限はしない |
4.2 |
3.7 |
4.7 |
3.9 |
C分からない・未定 |
16.7 |
9.3 |
16.1 |
25.2 |
Dその他(出勤の自粛を要請するなど) |
2.2 |
2.8 |
0.7 |
3.9 |
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◆上記で@Aと答えた企業の、自宅待機中の賃金の取り扱いは下記のとおりです。「賃金を通常どおり支払う」の割合が多いのは、欠勤控除がない「完全月給制」の企業や、「特別休暇」で対応する企業があるためと考えられます。
【自宅待機中の賃金の取り扱い】 |
(集計社数360社、%) |
区分 |
上記@の場合 |
上記Aの場合 |
@賃金、休業手当ともに支払わない |
14.8 |
18.2 |
A賃金は支払わず、休業手当を支払う |
14.8 |
7.1 |
B賃金を通常どおり支払う(欠勤控除がない場合を含む) |
50.8 |
37.7 |
C分からない・未定 |
9.8 |
28.6 |
Dその他(期間や状況によって異なるなど) |
9.8 |
8.4 |
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新型インフルエンザに対する賃金の法的取り扱い
◆新型インフルエンザの罹患(りかん)の疑いがある者については、「感染症予防法」により都道府県知事(実際は保健所)が外出自粛等を要請できることとされており、その要請が出た場合には、賃金・休業手当のいずれも支払う必要はありません。
◆保健所等の要請を待たずに、感染の疑いのある社員や、同居家族が感染した社員を自宅待機させる場合には、勤務自体はしていないため、賃金の支払いまでは必要ありませんが、休業手当の支払いが必要です。 |
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