出入国管理法における主な改正のポイント
平成22年6月25日 発行
昨年の7月15日に改正出入国管理法が公布され、その内容の多くが今年の7月1日から実施されます。今月号では出入国管理法の改正のうち、会社が外国人を雇用する場合に知っておくべき内容を解説します。

【外国人を雇用する場合の前提】

 外国人の方が日本に入国する場合、必ず入国の目的にあった「在留資格」「在留期間」が定められます。したがって、在留資格の範囲外の活動をすることはできず、在留期間を過ぎて滞在すると不法滞在(オーバーステイ)になってしまいます。

【在留資格の種類】
@在留資格に定められた範囲でのみ就労が可能な在留資格(「外交」「技術」など)
 ※改正により、「技能実習」が7月1日から新設され、全部で18種類になります。
A就労活動に制限がない在留資格(「永住者」「日本人の配偶者等」など全部で4種類)
B原則として就労が認められていない在留資格(「留学」「短期滞在」など)
 ※改正により、「留学」と「就学」が7月1日から一本化され、全部で5種類になります。

★在留資格に定められている範囲を超えた就労や、在留期間を過ぎてから行われた就労はすべて「不法就労」扱いとなり、上記の確認を怠ったことにより不法就労をさせた事業主に対しては、「不法就労助長罪」として「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または併科」がされます。

【主な改正の内容】

  改正のポイント 実施日
@新たな在留管理制度の導入 ●これまで「入管法」に基づき入国管理局等が行っていた業務と「外国人登録法」に基づき市区町村が行っていた業務を、法務省でまとめて行うことになります。
●具体的には、それぞれのデータを一本化した「在留カード」が交付されます。
在留期間の上限が「3年」から「5年」に伸びる予定なので、会社としては外国人労働者を長期間にわたり雇用できるようになります。
公布日から3年以内
(平成24年7月予定)
A特別永住者証明書の交付 特別永住者については,@の新たな在留管理制度の対象とならず、新制度の導入によって外国人登録証明書も廃止されるため、同様の証明書として法務大臣が「特別永住者証明書」を交付することとしています。 公布日から3年以内
(平成24年7月予定)
B研修・技能実習制度の見直し 研修生・技能実習生の保護を強化するため、新たな在留資格として「技能実習」が設けられます。 平成22年7月1日
C「留学」と「就学」の一本化 ●大学、短大等の学生が対象となる「留学」と、高等学校、各種学校等の学生が対象となる「就学」の区分をなくし、「留学」の在留資格に一本化します。
●これにより、「就学」だった留学生の資格外活動の時間が長くなります。
平成22年7月1日
D新たな退去強制事由の追加 新たな退去強制事由として,次のものが加わります。
・他の外国人に不正に上陸許可をさせる目的で、偽変造文書の作成等を教唆・幇助する行為をした場合
・不法就労を助長する行為をした場合
・資格外活動の罪により禁錮以上の刑に処せられた場合
平成22年7月1日
※上記@Aの実施にともなって、外国人登録制度は廃止されます。

【新しい研修・技能実習制度の概要】

これまでの制度では、研修生・技能実習生に十分な賃金が支払われないケースがあったため、現行の在留資格である「研修」とは別に、新たな在留資格として「技能実習」が創設されました。
【技能実習の期間と内容】
技能実習1号
(前半1年間)
「講習による知識修得活動」および「雇用契約に基づく技能等修得活動」
技能実習2号
(後半2年間)
技能実習1号で技能等を修得した者が、さらに習熟するために雇用契約に基づいて修得した技能等を要する業務に従事する活動
【労働関連法令の取り扱い】
●これまでは2年目から労働関係法令が適用されていましたが、新制度では1〜2カ月の「講習」が終わった時点から適用され、通常の労働者を雇用する時と同様の取り扱いをしなければなりません。
●労災保険は、技能実習生を受け入れた時点から適用となります。
●雇用保険、健康保険および厚生年金保険については、講習が終わった時点から通常の労働者と同様の基準で判断されます。

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