@相当長期間の注意・指導を行う |
能力不足の社員に対する解雇が有効と認められるためには、相当長期間にわたる注意・指導を行う必要があります。裁判例を見ると、「注意・指導を行わなかった」事例や「注意1回、始末書の提出1回」の事例では解雇が無効と判断されているのに対して、解雇が有効と判断された事例では、少なくとも1年以上指導・教育を行っています。 ただし、中途入社の社員で、特定の技能・能力を持っていることを前提に高額な給与で雇い入れた社員が、実際はその技能・能力を持っていなかったようなケースでは、事前の注意・指導が必要とはされていませんが、指導・教育は行った方がよいでしょう。 |
A注意・指導を行った証拠を文書で残しておく |
会社が能力不足の社員に注意・指導を行っていたとしても、裁判では証拠がなければその事実を認められることは少ないでしょう。解雇が有効と認められた事例では、いずれも注意・指導のメモや文書を証拠として残していたようです。 なお、始末書や顛末書など、本人の記名押印のある文書を残しておくと、証拠としてより信憑性が増すといえます。 |
B具体的な改善項目の設定を適正に行う |
具体的な改善項目の設定を行ったかということも、解雇の有効性を判断する上で重要な要素になります。解雇が無効と判断された事例では、解雇前に改善項目の設定を行っていませんが、有効と判断された事例では、いずれも具体的な改善項目の設定を行っていました。
【改善項目を設定する際の注意点】
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達成可能な改善項目を設定すること (達成不可能な高い改善項目を設定した場合は、退職させるための嫌がらせと取られる可能性があります) |
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改善項目の設定は本人の意見も聞いて、同意文書を取り付けておくこと (社員の意見を一部でも取り入れておけば、その改善項目の設定は会社が一方的に押し付けたものではないと評価されます) |
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観察期間を設けて、できれば2回以上のチャンスを与えること |
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C解雇の前に配置転換・異動や退職勧奨を行う |
解雇を検討する前に、まずは配置転換・異動を行い、それでも改善が見られない場合は退職勧奨を行います。退職勧奨に応じなければ、最終手段である解雇を検討することになります。裁判では、会社が解雇をする前にやるべきことをやったかどうかが重視されるため、このプロセスを踏むことが非常に重要です。 |