退職後の保険(任意継続/資格喪失後の給付編)
平成22年8月25日 発行

 労務情報No.193(平成22年5月25日発行)では、退職後の国民健康保険について解説しました。今月号ではA.健康保険の任意継続制度B.健康保険の資格喪失後の保険給付について解説します。  
退職後の健康保険の選択肢
@ 健康保険の任意継続被保険者になる
A 配偶者や子、父母の被扶養者になる
B 国民健康保険の被保険者になる

A-1.任意継続制度とは?

 任意継続制度とは、退職して健康保険の資格を喪失した人が、希望により在職中の健康保険に加入し続ける制度のことです。
この制度を利用している人を任意継続被保険者といいます。

 任意継続被保険者には、傷病手当金と出産手当金は支給されません。(下記B.の資格喪失後の保険給付の場合は受給できます)
その他は原則として、在職中と同様に取り扱われます。また、国民健康保険と異なり、被扶養者という考え方もあります。
※健康保険組合に加入している会社では付加給付部分が異なる場合があるので、各健康保険組合にご確認ください。

A-2.任意継続の加入要件と資格喪失

 任意継続被保険者になるためには、次の2つの要件をいずれも満たす必要があります。
     @退職日まで継続して2ヶ月以上健康保険の被保険者であること
     A退職日の翌日から20日以内に退職者本人が申請を行うこと

 申請先は、退職者の住所地の協会けんぽの支部、あるいは健康保険組合に加入している場合はその健康保険組合です。
 また、次のいずれかに該当したときは任意継続被保険者の資格を喪失します。
@任意継続被保険者になった日から2年※が経過したとき
A保険料を納付期日までに納付しなかったとき
B就職して、健康保険や共済等の被保険者になったとき
C75歳になったとき(後期高齢者医療制度に加入したとき)
D被保険者が死亡したとき
※任意継続は最長で2年間しか加入できないため、予定年月日として2年を経過する日が被保険者証に記載されています。

A-3.任意継続の保険料はいくらになりますか?

 任意継続の保険料は、会社負担分も本人が負担するため、在職中最後に納めた保険料の2倍の額になります。
ただし、上限額があり、健康保険組合や協会けんぽ(各都道府県)ごとに異なります。

(例)平成22年8月現在、協会けんぽ(東京都)の上限額は26,096円です(介護保険料を除きます)。

A-4.任意継続のメリットは何ですか?

 任意継続と国民健康保険の特徴は以下の通りです。
  メリット デメリット
任意
継続
被扶養者の数に関らず、保険料は被保険者分のみです。 最長2年間しか加入できません。保険料を納め忘れると自動的に資格を喪失します。
国民
健康
保険
雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者には、保険料の軽減措置があります。 被扶養者の考え方がないため、保険料が割高になることがあります。

B.健康保険の資格喪失後の保険給付

 退職して健康保険の資格を喪失しても、一定の要件を満たせば保険給付を受けることができます
 資格喪失後の保険給付には次の3つがありますが、被扶養者であった人が出産・死亡しても給付を受けられないのでご注意ください。

傷病手当金・出産手当金
 退職日に傷病手当金または出産手当金を受給している場合または受給することができる場合であって、退職日まで健康保険に継続して1年以上加入していれば、退職後も支給限度期間まで、傷病手当金または出産手当金が支給されます。

出産育児一時金
 退職日まで健康保険に継続して1年以上加入しており、退職日の翌日から6ケ月以内に出産した場合には、退職前に加入していた健康保険から出産育児一時金が支給されます。

埋葬料・埋葬費
 下記の要件のいずれかを満たした場合、死亡した人に生計を維持されていた人に50,000円の埋葬料が支給されます。
     @) 退職日の翌日から3カ月以内に死亡したとき
     A) 退職後の傷病手当金・出産手当金の受給期間中または受給終了後3カ月以内に死亡したとき
埋葬料を受けられる人がいない場合、実際に埋葬を行った人に埋葬費(埋葬の実費。50,000円が上限)が支給されます。

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