セクシュアルハラスメント対策について
平成22年12月25日 発行

セクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」といいます)という言葉は広く普及していますが、企業のセクハラ防止策については十分とはいえず、男女雇用機会均等法に関する相談の半分以上がセクハラに関するものとなっています。今月号では、男女雇用機会均等法の指針にある「事業主が雇用管理上講ずべき事項」を中心に、会社が行うべきセクハラ対策について解説します。

【セクハラにおける会社の法的責任】

@男女雇用機会均等法上の責任
男女雇用機会均等法では、職場でのセクハラによって社員が不利益を受けたり、職場の環境が悪くなることがないように雇用管理上必要な措置を取らなければならないとしています。これに違反してセクハラ対策が取られることなく、是正勧告にも応じない場合、企業名が公表されます。

A民事上の責任
[不法行為責任] 会社は、雇用している社員が業務上第三者に損害を与えた場合、使用者として社員とあわせて損害賠償の責任を負います(使用者責任)。そのため、セクハラが「職場」で行われた場合には使用者責任を問われる可能性が高くなります。
※職場とは会社内に限らず、出張先や取引先、営業車の中、宴席の場なども含まれる場合があります。

[債務不履行責任] 会社は、社員に働きやすい職場環境を保つように配慮する義務があるため、セクハラについて適切に対処しなかった場合、債務不履行責任を問われることになります。

【会社として行うべきセクハラ対策】

@セクハラにあたる行為と会社の方針を周知する  まず、どのような行為がセクハラになるのかを明確にし、セクハラがあってはならない旨の方針を明確にする必要があります。そのうえで就業規則などに規定し、ポスターや社内報、社内ホームページに公開する、社内研修を行うなどの方法で周知を行います。
Aセクハラを行った場合の処分を明確にして周知する  セクハラを行った者に対して、具体的にどのような処分が行われるのかを就業規則やセクハラ防止規程などに規定し、社員に周知する必要があります。
 どのような言動がどの懲戒処分にあたるのかを直接対応させて規定する方法のほかに、処分にあたっての判断要素のみを明らかにしておく方法もあります。
B相談に対する対応のための窓口を設置する  具体的には、窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的に対応可能な窓口が設けられている必要があります。(担当者は2人以上で、女性が含まれていることが望ましいとされています)
 窓口がうまく機能するために、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことや、社員に対して周知されていることも重要なポイントになります。
C窓口担当者が、相談に対して適切に対応できるようにする  設置された窓口において、あらかじめ相談対応の流れや担当者を決めておき、相談者に確認すべき事項を「相談受付票」などにまとめておくといった準備をしておくことが必要です。
 担当者には、対応のしかたやカウンセリングについての研修を行い、相談者が担当者の言動によってさらに心理的被害を受ける「二次被害」を防止することにも注意しなければなりません。
D相談についての事実関係を迅速かつ正確に確認する  相談があった場合には、相談者とセクハラを行ったとされる者(行為者)の双方から事実関係を確認する必要があります。ケースによっては目撃者など第三者への確認が必要となる場合がありますが、その場合には相談者の了解を得て行うといった配慮が必要です。
E行為者と被害者に適切な対応を行う  セクハラの事実が確認できたときは、行為者に対して懲戒処分を検討するとともに、部署が同じ場合は配置転換や行為者からの謝罪など、行為者と被害者の関係を改善するためのフォローも必要となります。
F再発防止策を検討する  事実確認ができた場合はもちろん、事実確認ができなかった場合も、相談があったということを認識したうえで、これまでの周知方法や対応方法に問題がなかったかを再度検討し、防止対策をあらためて周知し直す必要があります。
Gプライバシーを保護する措置を行う  セクハラ対応にあたって、相談者・行為者双方のプライバシーを保護するための対策を行い、社内に周知しなければなりません。この部分が徹底されていないと相談そのものがしにくくなってしまいます。
H不利益な取り扱いを行わないことを周知する セクハラに関して相談をしたことや、事実関係の確認に協力したことなどを理由として、解雇などの不利益な取り扱いを行わない旨を就業規則やセクハラ防止規程に規定し、周知する必要があります。

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