在宅勤務制度に関するQ&A

平成25年1月25日  発行

インターネットの普及など情報技術の発展により在宅勤務制度を取り入れる企業が年々増えています。在宅勤務制度は、ワークライフバランスの実現、通勤負担からの解放、オフィスコストの削減など、労働者と使用者双方にとって利点の多い制度ではありますが、同時に、労働時間の管理が難しいなどの不安視する声も聞かれます。今月号では、在宅勤務についてQ&Aを交えて解説します。

メリットおよびデメリット、注意点のまとめ

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【Q1】在宅勤務制度を導入する場合、労働契約や就業規則を見直す必要がありますか。

【A1】労働者の採用時に在宅勤務制度があることを労働契約書や就業規則等の規定等で明示し、合意があれば通常の勤務から在宅勤務へ業務命令として就業の場所を変更することは可能です。
しかし、新たに在宅勤務制度を導入する場合には、「労働条件の変更」にあたるため、労働者の同意が必要となってきます。

また、一定条件の下、就業規則に定める労働条件を労働契約の内容とすることが認められており、就業規則の変更によって労働条件を変更させることも可能です。ただし、一方的に不利益に変更することは原則として許されていませんので、ご注意ください。

【Q2】在宅勤務中の負傷や病気は、労災保険の業務災害として認められますか。また、在宅勤務者は雇用保険に加入することができますか。

【A2】在宅勤務者が労働基準法上の労働者として認められる場合、通常の労働者と同様に、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、雇用保険法等の労働基準関係法令の適用があります。したがって、在宅勤務中の負傷や病気であっても業務災害として認められる可能性があります。

ただし、在宅勤務中は、業務と私生活が混在しているため、業務が原因で発生した災害であるかどうかの判断が難しいのが現状です。個々のケースごとに、業務遂行性(労働者が事業主の指揮命令下にある状態か)および業務起因性(業務と傷病等の間に一定の因果関係があるか)の有無について判断、調査されることになります。

また、雇用保険の適用に関しては、事業所で勤務する通常の労働者と同一性があれば被保険者となります。

【Q3】情報通信機器を活用した在宅勤務者に事業場外みなし労働時間制を適用できるのは、どのような場合でしょうか。

【A3】在宅勤務制度は、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない勤務形態であることから、以下の基準を満たす場合に事業場外みなし労働時間制を適用することができます。

  • 業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
  • 情報通信機器が、事業主の指示により常時通信可能な状態にしておくこととされていないこと
  • 業務が、随時事業主の具体的な指示に基づいて行われていないこと

※事業場外みなし労働時間制とは、労働時間の全部あるいは一部を事業場外で労働する労働者について、その労働時間の算定が困難な場合に、所定労働時間労働したものとみなす制度です。

【事業場外で労働し、労働時間の算定が困難な場合】

事業場外で労働し、労働時間の算定が困難な場合のフロー

法定労働時間を超える定めをした場合は、労使協定を労働基準監督署へ届け出なければなりません。

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【Q4】在宅勤務時の電気代や通信費用の負担はどのようにすればよいでしょうか。

【A4】在宅勤務によって発生する費用の負担をどのようにするかについては、あらかじめ労使間で話し合い、ルールを定めておくことが必要です。文具、備品、宅配便といった費用も必要となってくることがありますので、事業主が費用を負担する場合はその限度額や請求方法を労働者にわかりやすく就業規則等に定めておくのが望ましいでしょう。

なお、在宅勤務者に費用の負担をさせる場合には就業規則等に定めなければなりません。