改正労働契約法について

平成25年2月25日  発行

「労働契約法の一部を改正する法律」(以下、「改正労働契約法」)が平成24年8月10日に公布になり、有期労働契約について、1.無期労働契約への転換、2.「雇止め法理」の法定化、3.不合理な労働条件の禁止、が条文化され、平成25年4月1日より施行となります。(2.は公布日の平成24年8月10日から施行)今月号では、改正労働契約法の内容と概要について解説します。

1.無期労働契約への転換(平成25年4月1日施行)

【改正内容】

有期労働契約が反復更新され、通算5年を超えた時に労働者が希望し、その旨を会社に申し出た場合は、有期労働契約は無期労働契約に転換されることになります。

※「5年」の起算点は、施行日以降に開始する有期労働契約からとなります。施行日前の有期労働契約は「5年」に含まれません。

契約期間一年の例

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①申込み

有期労働契約の通算契約期間が5年を超えた場合、更新後の契約期間の初日から末日までの間に、労働者はいつでも無期転換の申込みをすることができます。

申込みは、労働者の権利であり、労働者の自由意思によって行うことができます。

②転換

労働者が申込み(①)を行うと、会社は申込みを承諾したものとみなされ、その時点で無期労働契約(③)が成立します。但し、当該契約期間の満了をもって雇用を終了させようとした場合は、権利濫用による解雇とみなされ無効となることがあります。

なお、正社員に転換されるわけではなく、雇用形態は従前と同様に契約社員やパートタイマーのままです。

③無期労働契約

労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間等)は、直前の労働契約と同一となります。但し、別段の定めをすることにより、変更することが可能です。なお、無期転換後の職務内容が変更されないにも関らず、労働条件だけを低下させることは、望ましいものではありません。

④更新

契約更新の条件に無期転換申込みを放棄させるような定めをすることはできません(法の趣旨から無効と解されます)。

2.「雇止め法理」の法定化(平成24年8月10日施行)

【改正内容】

労働者保護の観点から、最高裁判例にて過去に雇止めを無効とした判例(雇止め法理)を条文化し、一定の場合に雇止めは無効とされます。

【対象となる有期労働契約】

  • 過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できるもの
  • 労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの

【要件と効果】

上記(1)、(2)のいずれかに該当した場合で、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は雇止めが認められず、従前と同一労働条件で有期労働契約が更新されます。

但し、この効果は、労働者からの有期労働契約の更新の申込みがあった場合に有効となります。(例え契約期間満了後でも遅滞なく申込みをすれば、有効となります。)

この申込みは、会社の雇止めの意思表示に対して、「辞めたくない、嫌だ」といった、単に意思表示を会社に対して行う方法でも良いとされています。

3.不合理な労働条件の禁止(平成25年4月1日施行)

【改正内容】

期間の定めがあることで有期契約労働者と無期契約労働者間で、不合理に労働条件を相違させることが禁止となります。

【判断の方法】

(1)職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)、(2)当該職務の内容及び配置の変更の範囲、(3)その他の事情、を考慮し、労働条件の相違が不合理と認められるかを個々の労働条件ごとに判断されます。

特に、通勤手当、食堂利用、安全管理面等について労働条件が相違する場合、(1)~(3)を考慮して、特別な理由が無い限り、合理的な相違とは認められません。