「紛争調整委員会によるあっせん」について

平成26年11月25日  発行

解雇や雇止め、パワハラ、セクハラ、メンタルヘルス問題などによる個々の労働者と事業主との間の紛争(以下「個別労働紛争」といいます。)は日々発生しており、これらに対応するための「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行されています。今回はこの法律の制度である「紛争調整委員会によるあっせん」(以下「あっせん」といいます。)について解説します。

○『対象となる』紛争

・解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争

・いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争

・退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争                 など

○『対象とならない』紛争

・労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争

・募集・採用に関する紛争

・裁判で係争中である、または確定判決が出ているなど、他の制度において取り扱われている紛争               など

1.あっせんとは

紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度です。

・紛争当事者間に、公平・中立な第三者として労働問題の専門家が入ります。

・双方の主張の要点を確かめ、双方から求められた場合には、両者が採るべき具体的なあっせん案を提示します。

2.あっせんの特徴

①手続きが迅速・簡便で専門家が担当

長い時間と多くの費用を要する裁判に比べ、手続きが迅速かつ簡便です。
紛争調整委員会の委員は弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家が担当します。

②利用は無料

あっせんを受けるのに費用は一切かかりません。

③合意の効力

紛争当事者間であっせん案に合意した場合、受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力を持つことになります。

④非公開

あっせんの手続きは非公開であり、紛争当事者のプライバシーは保護されます。

⑤不利益取扱いの禁止

労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。

3.制度の利用状況と相談内容

●平成25年度のあっせん申請件数  5,712件(前年度比 5.5%減)

○申請内容の主な内訳                  ○申請人内訳

『解雇』に関するもの 1,614件 労働者 5,610件
『いじめ・嫌がらせ』 1,474件 事業主 99件
『雇止め』 548件 労使双方 3件
『労働条件の引き下げ』 546件

※前年に比べて、「解雇」に関するものが減少し、「いじめ・嫌がらせ」、「雇止め」などが増加しています。

あっせん制度流れ説明図

※画像はクリックすると拡大します。