【最高裁判決の概要】
◆病院で副主任の立場にあった理学療法士が、妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任を降格させられ、育児休業終了後も副主任に任命されなかったケースにおいて、男女雇用機会均等法の趣旨に照らして違法であるとして、高裁に差し戻しをしました。
※一審および控訴審では、副主任の解任は女性の同意を得て、病院の人事裁量権の範囲内で行われたものであり、男女雇用機会均等法の不利益取扱いにはあたらないという判断をしていました。
【解釈通達のポイント】
妊娠・出産、育児休業等を「契機として」(原則として、当該事由終了から1年以内に)不利益取扱いをした場合
男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に違反
(妊娠・出産、育児休業等を「理由として」不利益取扱い(※)を行ったと解釈されます)
※妊娠・出産、産前・産後休業、軽易業務転換、育児休業、短時間勤務、子の看護休暇などを理由として、
解雇・雇止め、契約更新回数の引き下げ、降格、減給、不利益な配置変更・人事考課などを行うこと。
ただし、以下の例外に該当する場合は、違反には当たらないとされます
●業務上の必要性から支障があるため、不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、
●その業務上の必要性の内容や程度が、法の規定の趣旨に実質的に反しないと認められるほど、不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情があるとき
(例外に該当するかどうかの判断ポイント)
1.経営状況の悪化が理由である場合
債務超過や赤字累積など不利益取扱いをしなければ業務運営に支障が生じる状況にあった上で、不利益取扱いを回避する合理的な努力がなされ、人員選定が妥当である 等
2.本人の能力不足等が理由である場合
妊娠等の事由の発生前から能力不足等が問題とされており、不利益取扱いの内容・程度が
能力不足等の状況と比較して妥当で、改善の機会を相当程度与えたが改善の見込みがない 等
●契機とした事由や不利益取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、労働者が不利益取扱いに同意している場合において、
●有利な影響の内容や程度が、不利益取扱いによる不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明されるなど、一般的な労働者であれば同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき
(例外に該当するかどうかの判断ポイント)
・事業主から労働者に適切な説明が行われ、労働者が十分に理解した上で不利益取扱いに応じるかどうかを決めることができたか
・不利益取扱いの直接的影響だけでなく、間接的な影響(降格・減給等)についても説明されたか
・書面など、労働者が理解しやすい形で明確に説明がなされたか
・契機となった事由や取扱いによる有利な影響(業務量の軽減等)があって、それが不利な影響を上回っているか 等
※実際にはより詳細な状況等を確認した上で違法性の判断が行われます。