【身元保証契約の基礎知識】
身元保証契約は、「身元保証に関する法律」により厳しく制限され、身元保証人が必要以上に重い責任を負わないようになっています。
① 身元保証契約は、会社と社員との契約ではなく、会社と身元保証人との契約です。
② 身元保証契約の有効期間は、期間の定めのない場合は3年間、期間を定める場合は最長5年間です。(更新する場合も5年)
身元保証契約に自動更新の規定を設けても無効となるため、実質的に自動更新はできません。期限が来たら改めて身元保証契約書を提出してもらう必要があります。
なお、身元保証契約の更新を行っていない場合は、社員が起こした損害に対する賠償を身元保証人に請求できません。
③ 損害が生じた場合でも、身元保証人に全額を賠償させるということはなく、次の事項やその他の事情を考慮した上で、裁判所が判断します。
(賠償限度額はそれぞれのケースによります。裁判では損害額の3割程度と判断したものもあります)
1.社員の監督に対しての会社側の過失の有無
2.身元保証人が身元保証を引き受けるにいたった経緯
3.社員の任務や身分に変化があったかどうか など
【身元保証契約のQ&A】
【Q1】身元保証契約を締結した後に、必要なことはありますか?
【A1】会社は、必要に応じて身元保証人に現在の状況を通知しなければなりません。
会社は、次の事項が発生した場合には、遅滞なく身元保証人に通知しなければなりません。
1. 本人に業務上不適任や不誠実な行為があり、このために身元保証人に責任が生ずる恐れがあることを知ったとき。
2. 本人の勤務内容や勤務地が変更され、このために身元保証人の責任が増加したり、監督が困難になったとき。
身元保証人は、会社から上記の通知を受けた場合や、自分でその事実を知ったときは、身元保証契約を将来に向かって解除することができます。
会社がこの通知を行っていない状態で損害が生じた場合、身元保証人の賠償責任は低くなり、賠償額が減少される可能性があります。
会社側としては、入社時に身元保証契約を結ぶだけでなく、社員の立場や役割が変わった(重くなった)時点で忘れずに身元保証人に通知をするとともに、身元保証契約の見直しを検討する必要があります。(見直しには、新たに身元保証人を立てて身元保証契約を結び直すことを含みます)
【Q2】身元保証契約を再提出してもらう必要はありますか?
【A2】社員の立場や役割に応じて考える必要があります。
身元保証契約を結ぶと本人だけではなく身元保証人にも賠償責任を負わせるということになりますが、それ以上に身元保証契約を結ぶことで社員に重大なミスや不正行為を行わせないようにする抑止力が目的ともなっています。
3年または5年経過した時点で、一律に身元保証契約を再提出してもらうことはもちろん可能ですが、実効性の観点からは疑問です。それよりも、重要な責任や大金を扱う業務に就く社員について、しっかりと身元保証契約を結び直しておくことが、会社のリスクを軽減するために必要な対策となります。
【Q3】身元保証契約書と併せて印鑑証明書を提出させることはできますか?
【A3】印鑑証明書を提出させることは可能ですが、社員や身元保証人に対して十分な説明が必要です。
身元保証契約書と併せて保証人の印鑑証明書を提出させることは、社員が架空の人物を仕立てたり、本人の同意を得ずに身元保証契約書を作成することを防ぐ狙いがあります。
とはいえ、印鑑証明書を提出させることは、身元保証人の不安を煽る懸念もあるため、「身元保証のため」ということを十分説明して提出してもらう必要があります。