【第三者行為災害について】
「第三者行為災害」とは、労災保険給付の原因である災害が第三者の行為などによって生じたもので、労災保険の受給権者である被災労働者または遺族(以下「被災者等」)に対して、第三者が損害賠償の義務を有しているものをいいます。
この「損害賠償の義務を有している」とは民法などの規定により、第三者に民事的な損害賠償責任が発生した場合をいいます。
※第三者とは、災害に関する労災保険の保険関係の当事者(政府、事業主及び労災保険の受給権者)以外の者のことをいいます。
※第三者行為災害となる主な場合は交通事故(自損事故の場合を除く)、他人から暴行を受けた場合などです。
【民事損害賠償と労災保険の調整】
第三者行為災害の場合、被災者等は第三者に対し損害賠償請求権を取得し、労災保険に対しても給付請求権を取得します。
同一の事由について二重のてん補を受けることになれば、実際の損害額より多く支払われることになり不合理です。
また、本来被災者等へのてん補は災害の原因となった加害行為などに基づき第三者が負担すべきものと考えられています。
そこで第三者行為災害における損害賠償と労災保険給付の支給調整方法として「求償」と 「控除」の2種類が定められています。
[求償] | [控除] |
「求償」とは、政府が労災保険給付と引き換えに被災者等が第三者に対して持っている損害賠償請求権を取得し、この権利を第三者(交通事故の場合は保険会社など)に直接行使することをいいます。 |
「控除」とは、治療費等労災保険給付と同一の事由により第三者の損害賠償(自動車事故の場合は自賠責保険などの支払い)が労災保険給付より先に行われていた場合、政府は、その価額の限度で労災保険給付をしないことをいいます。 |
※特別支給金(休業(補償)給付と同時に支払われる休業特別支給金など)については、支給調整は行われず、満額支給されます。
【特に注意が必要な事項】
[示談を行う場合]
被災者等と第三者との間で、被災者等が受け取る全ての損害賠償についての示談(いわゆる全部示談)が、真正に(錯誤や強迫などではなく両当事者の真意によること)成立し、被災者等が示談内容以外の損害賠償の請求権を放棄した場合、政府は、原則として示談成立以後の労災保険給付を行わないこととなっています。示談を行う際は十分に注意が必要です。
[派遣労働者に係る第三者行為災害]
派遣労働者に発生した労働災害で、第三者の直接の加害行為がない場合でも、以下の①、②の両方に該当する場合は、派遣先事業主を第三者とする第三者行為災害として取り扱われます。
① 派遣労働者の被った災害について、派遣先事業主の安全衛生法令違反が認められる場合
② 上記①の安全衛生法令違反が、災害の直接原因となったと認められる場合