産業医制度等の見直しについて

平成29年5月25日  発行

平成29年6月1日に、労働安全衛生規則等の一部が改正され、産業医制度等に係る見直しが行われます。今月号では、その主な内容について解説します。

【改正の内容】

(1)健康診断の結果に基づく医師等からの意見聴取に必要となる情報の医師等への提供

会社は、各種健康診断の有所見者について医師等が就業上の措置等に関する意見具申を行う上で必要となる
労働者の業務に関する情報当該医師等から求められたときは、これを提供しなければならない。

※「労働者の業務に関する情報」は、労働者の作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、深夜業の回数・時間数等となります。

(2)長時間労働者に関する情報の産業医への提供

会社は、毎月1回以上、一定の期日を定めて、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間の算定を行ったときは、速やかに、その超えた時間が1月当たり100時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならない。

※上記に該当する労働者がいない場合でも、その旨の情報を産業医に提供する必要があります。

(3)産業医の定期巡視の頻度の見直し

少なくとも毎月1回行うこととされている産業医による作業場等の巡視について、会社から毎月1回以上産業医に所定の情報(※1)が提供されている場合であって、会社の同意(※2)がある場合には、産業医による作業場等の巡視の頻度を、少なくとも2月に1回とすることを可能とする。

※1 所定の情報とは以下になります。

① 衛生管理者が少なくとも毎週1回行う作業場等の巡視の結果

② ①のほか、衛生委員会又は安全衛生委員会の調査審議を経て会社が産業医に提供することとしたもの

③ 上記(2)「長時間労働者に関する情報の産業医への提供」の情報

(必要な情報が産業医に提供されない場合は、少なくとも毎月1回、産業医の巡視が必要となります。)

(衛生管理者の巡視が週1回以上実施されない場合等、労働安全衛生規則第15条第1項関係の法令の規定に違反している場合も、
少なくとも毎月1回、産業医の巡視が必要となります。)

※2 会社の同意は、産業医の意見に基づいて、衛生委員会又は安全衛生委員会において調査審議を行った結果を踏まえて行うことが必要です。
なお、この調査審議は、巡視頻度を変更する一定の期間を定めた上で、その一定期間ごとに産業医の意見に基づいて行うこととなります。

【参考:産業医の選任について】

会社は、事業場の規模に応じて、以下の人数の産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければなりません。

(1)労働者数50人以上3,000人以下の規模の事業場 ・・・1名以上選任

(2)労働者数3,001人以上の規模の事業場・・・ ・・・・・2名以上選任

なお、次に該当する事業場にあっては、専属の産業医を選任することとなっています。

ア 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場

イ 一定の有害な業務(深夜業を含む業務など)に常時500人以上の労働者を従事させる事業場

※労働者数50人未満の事業場については、産業医の選任義務はありませんが、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師等に、労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならないこととされています。