賃金不払い残業の是正指導について

平成29年12月25日  発行

厚生労働省は、平成28年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていないケース(賃金不払い残業)に対する是正指導の結果を公表しました。今月号では、是正指導の結果と改善の取り組み事例について解説します。

【是正指導の結果】

◆平成28年度の1年間に行った是正指導のうち、ひとつの企業で不払い残業代の支払い総額が100万円以上となったものについて集計して公表。

① 業種別の企業数 ② 業種別の対象労働者数 ③ 業種別の是正支払額
商業(304件、22.6%) 製造業(19,447人、19.7%) 商業(29億4,885万円、23.1%)
製造業(267件、19.8%) 保健衛生業(17,103人、17.4%) 保健衛生業(20億6,909万円、16.2%)
保健衛生業(158件、11.7%) 商業(16,779人、17.1%) 製造業(16億8,367万円、13.2%)
建設業(134件、9.9%) 建設業(7,688人、7.8%) 建設業(14億6,157万円、11.5%)
接客娯楽業(94件、7.0%) 教育・研究業(7,026人、7.2%) 運輸交通業(9億6,095万円、7.6%)
その他(392件、29.0%) その他(29,935人、30.8%) その他(35億9,914万円、28.4%)
合計:1,349件 合計:97,978人 合計:127億2,327万円
1企業当たりで支払われた残業代の
平均額 : 943万円
労働者1人当たりに支払われた残業代の
平均額 : 13万円
前年度と比較して、約27億円の増額

【賃金不払い残業解消のための取り組み事例】

ケース1(業種:小売業)

▼違法な長時間労働が疑われる情報をもとに、労基署が立入調査を実施。

⇒タイムカードの打刻時間と警備記録の入退社データにかい離があり、会社指定のユニフォームへの着替えを行った後にタイムカードを打刻している状況が認められた。

              

【企業が実施した解消策】

◆店長会議において、労務管理に関する勉強会を開催するとともに、店舗内の主任会議、朝礼、社内報においてタイムカードを適正に打刻するよう、全労働者に周知を図った。

◆人事総務部社員が、定期的に警備記録とタイムカードの打刻時間を確認するとともに、各店舗の労務管理状況の抜き打ちチェックを行うことにした。

◆労働組合と労務管理に関する議論を行い、改善すべき点を取りまとめて順次実施した。

◆賃金台帳などの労務管理に関する書類について、定期的に社会保険労務士による監査を実施することにした。

ケース2(業種:電気通信工事業)

▼インターネット上の求人情報等の監視情報※を受けて、労基署が立入調査を実施。

⇒労働者本人が記入する「申告書」の時間とPCのログ記録のかい離、夜間の社員駐車場の駐車状況、労働者のヒアリングなどから、賃金不払い残業の疑いが認められた。

              

【企業が実施した解消策】

◆代表者が「賃金不払い残業撲滅宣言」を行い、全店で説明会を実施した。

◆申告書とPCのログ記録に30分以上のかい離が認められた場合には、理由を明記させ、所属長の承認を得ることにした。

◆総務部社員が定期的に、労働時間が適正に把握されているかについて実態調査を行い、必要な指導を行うことにした。

※厚生労働省が、平成27年度からインターネット上の賃金不払い残業などの書き込み等の情報を監視・収集する取り組みを実施しており、労基署はその情報に基づいて必要な調査等を行っています。