パワーハラスメント(パワハラ)について

令和元年8月25日  発行

2020年4月からはパワーハラスメント防止措置が義務化(大企業)される見込みであることを含め、パワーハラスメント(パワハラ)に対する取組の
重要性が高まってきています。今月号では、パワハラの定義や類型などについて解説します。
(※ 中小企業は公布日(令和元年6月5日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日までは努力義務となっています。)

1.パワハラの定義とは

○ 職場におけるパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性(※Ⅰ)を背景に、
業務の適正な範囲(※Ⅱ)を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

※Ⅰ【職場内での優位性】

⇒ 職務上の地位に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれるものとされ、上司から部下への
いじめ・嫌がらせだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものも含まれます。

※Ⅱ【業務の適正な範囲】

⇒ 業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、業務上の適正な範囲で行われている場合には、
パワハラにはあたりません。

2.パワハラの類型

 パワハラ行為は、下記の①~⑥の類型に分類されます。ただし、①~⑥の類型はすべてを網羅したものではなく例示のため、ここにない行為でもその内容によってはパワハラに該当するものもあります。

パワハラの類型 被害の実例

① 身体的な攻撃

(暴行・傷害)

・足で蹴られる。

・胸ぐらを掴む、髪を引っ張る、火の着いたタバコを投げる。

② 精神的な攻撃

(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

・みんなの前で、大声で叱責。物をなげつけられる。
ミスをみんなの前で、大声で言われる。

・人格を否定されるようなことを言われる。お前が辞めれば、
改善効果が300万でるなど会議上で言われた。

③ 人間関係からの切り離し

(隔離・仲間外し・無視)

・挨拶をしても無視され、会話をしてくれなくなった。

・他の人に「私の手伝いをするな」と言われた。

④ 過大な要求

(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)

・終業間際に過大な仕事を毎回押し付ける。

・休日出勤しても終わらない業務の強要。

⑤ 過少な要求

(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

・従業員全員に聞こえるように程度の低い仕事を名指しで命じられた。

・営業なのに買い物、倉庫整理などを必要以上に強要される。

⑥ 個の侵害

(私的なことに過度に立ち入ること)

・交際相手の有無について聞かれ、過度の結婚を推奨された。

3.パワハラに対する取組

 企業がパワハラを防止するための基本的な取組には、下記の①~⑦の取組があるとされています。

取組 主な取組内容

① トップによるメッセージの発信

企業として「職場のパワーハラスメントはなくすべきものである」という方針を、
トップのメッセージの形で明確に打ち出す。

② 社内ルールの策定

就業規則や労使協定で、パワハラ防止の規定を明確に定める。

③ 社内アンケートによる実態の把握

パワハラ防止対策を効果的に進められるように、職場の実態を把握するためのアンケート調査を
早い段階で実施する。

④ 社内教育・研修の実施

パワハラの教育研修を実施する。

⑤ 社内での周知・啓蒙

組織の方針、ルールなどとともに、相談窓口やその他の取組について周知する。

⑥ 相談・解決の場の提供

社員向けの相談窓口を設置し、初期の段階で相談できるしくみをつくる。

⑦ 再発防止の取組の実施

パワハラが起こった後に、再発防止の具体的な取り組みを検討して実施する。