企業におけるSNS対策について

令和元年12月25日  発行

近年、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で従業員が不適切な投稿や動画をアップすることにより、企業の責任が問われる事件が増えています。今月号では、企業におけるSNS対策の内容について、規定例を交えて解説します。

【事前にしておくべき対応】

会社として事前にしておくべきSNS対策には、次のようなものがあります。

① SNSの使用禁止・制限、
持ち込み制限

・ 就業時間中に限定して、SNS利用を禁止することや私物であるPCやスマホをロッカー等に入れさせたうえで就業させる。

→ 職場での撮影や投稿を阻止できる目的があり、職務専念義務のある就業時間に限定しているので
適法。

※ 休憩時間や就業時間外までSNSの利用禁止や制限をすることは、プライバシーや表現の自由を侵害するものとして違法と判断される可能性が高い。

② SNSの閲覧・調査
(モニタリング)

・ 会社から貸与されたPCを使用する場合や、会社のサーバー経由で従業員がSNSを利用する場合に限定して、会社がその内容をモニタリングすることができる。

→ セキュリティ規程等において、モニタリング権限に関する規定をしておくことが必要。

※ 従業員の私的なアカウントを届出させ、会社でモニタリングすることは、プライバシーや表現の自由を侵害するものとして違法と判断される可能性が高い。

【SNS対策における規定例】

SNSの事前制限、問題発生時の調査対応(への協力)、問題発生後の処分のいずれについても、あらかじめ就業規則等に規定をし、従業員に対して周知しておくことが必要です。規定しておくべき内容は以下のようなものがあります。

《一般的な禁止規定》

○ 個人の携帯電話等の私物は会社指定のロッカーに保管し、職場に持ち込まないこと

○ 就業時間中に私用の電話やメール、SNSへの投稿等の私的行為をしないこと

○ 会社の許可なく職場を撮影しないこと、また、許可なく撮影した職場等の写真・動画等をメール・SNSその他の方法により不特定多数の者が閲覧可能な状態としないこと

○ 就業時間外に、電話やメール、SNSその他の方法で会社に関係する投稿等をすることにより、会社に損害を与える行為をしないこと

《会社のSNS運用担当者に対する禁止規定》

○ 従業員が、業務として記事・写真・動画等をメール・SNSその他の方法により投稿する場合は、社外の者の権利・利益を侵害したり、あるいは不快にさせたりすることにより、会社に損害を与えないこと

○ 就業時間外の投稿はしないこととし、就業時間外に緊急に対応する必要性がある場合であっても、記事・写真・動画等の内容が客観的に見て適切であると判断できる場合を除き、上司の許可を得ずに投稿しないこと

《モニタリング・調査権限に関する規定》

(モニタリング)

○ 会社は、会社が必要と認めた場合に、会社の機器やサーバー、従業員に貸与したパソコン、携帯電話その他の機器のデータ等を必要な範囲内で調査することができる

(調査)

○ 会社は、従業員に対して法令および規則、ガイドラインならびに就業規則の遵守事項等に違反する行為があったとの疑いが生じた場合に、会社が貸与したパソコン、携帯電話その他の機器のデータ等を必要な範囲内で調査することができる

○ 当該従業員は、個人所有のパソコン、携帯電話等につき、会社から調査の協力を求められた場合は、調査に合理的な理由があり、かつ調査方法が妥当である場合に限り、協力しなければならない