労災保険給付の改正について

令和2年8月25日  発行

働き方の多様化や非正規雇用の増加などを理由に労働者災害補償保険法が改正され、令和2年9月1日より、複数企業で勤務する人の労災の認定や保険給付について、すべての勤務先の負荷や賃金をもとに算定されることになります。今月号では、この改正内容について解説します。なおこの改正は、令和2年9月1日以降にけがや病気等になった人について適用されます。

【改正のポイント】

① 労災の保険給付における給付額の算定

これまでは、労災事故が発生した勤務先の賃金額のみで給付額が算定されていましたが、改正後はすべての勤務先の賃金額を合計した額をもとに給付額が算定されます。

労災の保険給付における給付額の算定の解説図

※対象となる給付は、休業(補償)給付、障害(補償)給付、遺族(補償)給付、傷病(補償)給付などです。

※②の改正内容により労災保険給付が受けられる場合についても、同様の取り扱いがなされます。

② 仕事での負荷(労働時間やストレス等)の総合的な評価

これまでは、それぞれの勤務先ごとに負荷を個別に評価して労災認定できるかどうかを判断していましたが、改正後はそれぞれの勤務先ごとに負荷を個別評価して労災認定できない場合、すべての勤務先の負荷を総合的に評価して労災認定できるかどうかが判断されます。

仕事での負荷(労働時間やストレス等)の総合的な評価の解説図

※対象となる疾病は、脳・心臓疾患や精神障害などです。

★原則として労災によってけがや病気等になったときに、2つ以上の会社に雇用されている人が今回の改正の対象です。ただし、けがや病気等になったときに1社のみの雇用や退職後であっても、原因となる負荷が2つ以上の会社に雇用されている際に生じていた場合には、この改正の対象になります。また、一般の労働者だけでなく中小企業事業主等の特別加入者も対象になります。