高年齢者雇用安定法の改正について

令和3年4月25日  発行

令和3年4月1日から、高年齢者が活躍できる環境整備を図る法律である「高年齢者雇用安定法」が改定され、70歳までの就業機会の確保が努力義務として追加されました。今月号では、高年齢者雇用安定法の改正のポイントについて解説します。

1.これまでの高年齢者雇用安定法

◆ 60歳未満の定年禁止(義務)

⇒ 事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければなりません。

◆ 65歳までの雇用確保措置(義務)

⇒ 定年を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。

① 65歳までの定年引き上げ

② 定年制の廃止

③ 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入 ※ 原則として希望者全員

2.令和3年4月1日からの改正点

⇒ 65歳までの雇用確保措置(義務)に加えて、70歳までの就業機会を確保するため、下記、高年齢者就業確保措置①~⑤のいずれかの措置を講ずる
努力義務が新設されました。

《対象となる事業主》

・ 定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主

・ 65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主

《高年齢者就業確保措置(努力義務)》

雇用による措置 雇用によらない措置(創業支援等措置)

① 70歳までの定年引き上げ

④ 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を
締結する制度の導入

② 定年制の廃止

⑤ 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

a. 事業主が自ら実施する社会貢献事業

b. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入

※ 特殊関係事業主(いわゆるグループ関連会社)に加えて、他の
事業主による雇用も含まれます

※ ④、⑤については、計画を策定し、過半数労働組合等の同意を得たうえで、措置を導入する必要があります。

※ ③~⑤では、事業主が講じる措置について、対象者を限定する基準を設けることができますが、その場合は過半数労働組合等との同意を得ることが
望ましいとされています。

※ 「社会貢献事業」とは、不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業のことです。「社会貢献事業」に該当するかどうかは、事業の性質や内容等を勘案して個別に判断されることになります。

※ ⑤bの「出資(資金提供)等」には、出資(資金提供)のほか、事務スペースの提供等も含まれます。

3.改正点に関するQ&A

Q1.70歳までの就業確保措置を講じる際に、就業規則を変更する必要はあるのでしょうか?

A1.定年の引き上げ、継続雇用制度の延長等の措置を講じる場合や、創業支援等措置に係る制度を社内で新たに設ける場合には、「退職に関する事項」に該当するものとして、就業規則を作成、変更し、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

Q2.65歳以上継続雇用制度による継続雇用先として認められる他の企業として、派遣会社も認められるのでしょうか?

A2.改正法の趣旨が「希望する高齢者が70歳まで働ける環境の整備」であることを踏まえれば、常用型派遣(労働者派遣事業者が常時雇用される労働者の中から労働者派遣を行うこと)ように、雇用が確保されている場合は、派遣会社であっても認められます。