脳・心臓疾患の労災認定基準改正について

令和3年11月25日  発行

脳・心臓疾患の労災認定基準が改正され、令和3年9月15日に施行されました。改正後は労働時間が短くても、労働時間以外の負荷要因による負荷が大きい場合は労災認定される可能性があるため、時間外労働の抑制や労働時間以外の負荷要因を減らすことが一層求められることになります。今月号ではこの改正内容について解説します。

【改正のポイント】

(1)長期間の過重業務の評価にあたり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することが明確化されました。

【改正前】発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が
認められる場合について業務と発症との関係が強いと評価できるとされていました。

【改正後】上記の時間に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合、「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、
業務と発症との関係が強いと評価できることが明確にされました。

(2)長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因が見直され、網掛けの項目が新たに追加されました。

労働時間以外の負荷要因 勤務時間の不規則性 拘束時間の長い勤務
休日のない連続勤務
勤務間インターバルが短い勤務
※「勤務間インターバル」とは、終業から次の勤務の始業までをいいます。
不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
事業場外における移動を伴う業務 出張の多い業務
その他事業場外における移動を伴う業務
心理的負荷を伴う業務
※ 改正前の「精神的緊張を伴う業務」の内容が拡充されパワハラ、セクハラ、カスハラなどが具体的出来事として記載されました。)
身体的負荷を伴う業務
作業環境
※長期間の過重業務では付加的に評価
温度環境
騒音

(3)短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合が明確化されました。

短期間の
過重業務
発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合
発症前おおむね1週間継続して、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合
 
異常な
出来事
業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合
事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に携わった場合
生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合
著しい身体的負荷を伴う消火作業、人力での除雪作業、身体訓練、走行等を行った場合
著しく暑熱な作業環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な作業環境下での作業、
温度差のある場所への頻回な出入りを行った場合

(4)対象疾病に「重篤な心不全」が新たに追加されました。

【改正前】不整脈が一義的な原因となった心不全症状等は、対象疾病の「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱っていました。

【改正後】心不全は心停止とは異なる病態のため、新たな対象疾病として「重篤な心不全」が追加されました。
「重篤な心不全」には、不整脈によるものも含みます。