月60時間を超える時間外労働の割増賃金率について

令和4年11月25日  発行

2023年4月1日から、中小企業につきましても、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%に引き上げられます
(大企業については2010年4月より適用)。今月号ではこの内容について解説します。

1.改正ポイント

(1)2023年3月31日まで(2)に該当する中小企業については、適用が猶予されていましたが、下記の通り
2023年4月1日からは猶予措置が終了し、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%になります。

(2023年3月31日まで)
→
(2023年4月1日から)

月60時間超の残業割増賃金率
大企業は50%(2010年4月から適用)
中小企業は25%

月60時間超の残業割増賃金率
大企業、中小企業ともに50%
※ 中小企業の割増賃金率を引き上げ

1か月の時間外労働
(1日8時間・1週40時間を超える労働時間)
60時間以下 60時間超
大企業 25% 50%
中小企業 25% 25%
1か月の時間外労働
(1日8時間・1週40時間を超える労働時間)
60時間以下 60時間超
大企業 25% 50%
中小企業 25% 50%
→

(2)中小企業に該当するかは、①または②を満たすかどうかで企業単位で判断されます。

業種 ① 資本金の額または出資の総額 ② 常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
上記以外のその他の業種 3億円以下 300人以下

2.深夜・休日労働の取扱い

(1) 深夜労働との関係

→ 月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合、
深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。

(2) 休日労働との関係

→ 月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日注①に行った労働時間は含まれませんが、法定休日以外の休日に行った労働時間は
含まれます。(※)法定休日労働の割増賃金率は35%です。

※ 注① : 法定休日とは、会社は1週間に1日または4週間に4日休日を与えなければいけません。これを「法定休日」といいます。

3.就業規則の変更

〇 割増賃金率の引き上げに合わせて就業規則の変更が必要となる場合があります。下記「就業規則の記載例」も参考ください。

【就業規則の記載例】

(割増賃金)

第〇条 時間外労働に対する割増賃金は、次の割増賃金率に基づき、次項の計算方法により支給する。

(1)1か月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は、次の通りとする。この場合の1か月は毎月注②を起算日とする。

① 時間外労働60時間以下・・・・25%

② 時間外労働60時間超 ・・・・50% (以下、略)

※ 注② : 1か月の起算日は、賃金計算期間の初日、毎月1日、36協定の期間の初日などにすることが考えられます。

4.代替休暇制度

〇 月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため引き上げ分の割増賃金の支払の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与する制度を設けることができます。導入にあたっては、労使協定の締結と就業規則への記載が必要になります。

※ 代替休暇制度は、会社が個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけるものではありません。個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、労働者の意思により決定されます。