職場における労働衛生基準について

令和5年1月25日  発行

令和3年12月1日に、多様な労働者の働きやすい環境整備への関心の高まり等の社会状況の変化を踏まえ職場における労働衛生基準が改正され
順次施行されました。併せて、事務所衛生基準規則や労働安全衛生規則等について、一部運用が見直されています。
今月号ではこの内容について解説します。

(1)照度について

事務所において労働者が常時就業する室における作業面の照度基準が、従来の3区分から2区分に変更されました。
「一般的な事務作業」については300ルクス以上、「付随的な事務作業」については150ルクス以上であることが求められています。
今回の改正は、照度不足の際に生じる眼精疲労や、文字を読むために不適切な姿勢を続けることによる上肢障害等の健康障害を防止する観点から、すべての事務所に対して適用されます。

【改正前】 【改正後】
作業の区分 基準 作業の区分 基準
精密な作業 300ルクス以上 一般的な事務作業
(精密な作業、普通の作業が
1つの区分に変更)
300ルクス以上
普通の作業 150ルクス以上
粗な作業 70ルクス以上 付随的な事務作業※1 150ルクス以上

※1 資料の袋詰め等、事務作業のうち、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のないものが該当します。

【ルクスについて 】

「ルクス」は照明の明るさを示す単位で、光源によって照らされている面(机上面や床面など)にどれだけの光が到達して
いるかを表します。この数値が高いほど明るい状態であることを表しています。
例えば、オフィス全体は明るくても、机上やパーテーションなどで区切られている執務スペースなど実際に作業を行う面
(手元)が暗い場合は基準を満たしていない可能性があります。

(2) 休養室・休養所について

常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用する事業者は、休養室又は休養所を男性用と女性用に区別して設ける必要(義務)があります。これらの事業場において病弱者、生理日の女性等が一時的に使用するために設けられるもので、長時間の休養等が必要な場合は速やかに医療機関に搬送又は帰宅させることが基本であることから、随時利用できる機能が確保されていれば専用の設備である必要はありません。また、休養室又は休養所では体調不良の労働者が横になって休むことが想定されており、利用者のプライバシーと安全が確保されるよう、設置場所の状況等に応じた配慮が求められています。

配慮のポイント

① 入口や通路から直視されないように目隠しを設ける。

② 関係者以外の出入りを制限する。

③ 緊急時に安全に対応できる。 等

(3)温度について

事務所において、事業者が空気調和設備を設置している場合の、労働者が常時就業する室の気温の努力目標値が変わりました。

【改正前】 17 度 以上 28 度 以下       →       【改正後】 18 度以上 28 度 以下

(4)救急用具について

事業者に備えることが義務づけられている「負傷者の手当に必要な救急用具及び材料」について、備えなければならない具体的な品目が規定から削除されました。各事業所において想定される労働災害等に応じて、安全管理者や衛生管理者、産業医等の意見を交えながら衛生委員会等で調査審議、検討等を行い、応急手当てに必要なものを備えることになります。