労働条件明示のルールについて

令和5年4月25日  発行

令和6年4月から、労働条件明示のルールが変わります。今月号ではこの内容について解説します。

【労働条件明示の制度改正のポイント】

1.全ての労働者に対する明示事項について

(1)就業場所・業務の変更の範囲の明示(労働基準法施行規則5条の改正)

→ 全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」や「更新直後」の
就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」※1についても明示が必要になります。

労働条件通知書(1. (1)イメージ図)

就業の場所 (雇入れ直後) (変更の範囲)
従事すべき
業務の内容
(雇入れ直後) (変更の範囲)
【有期雇用特別措置法による特例の対象者(高度専門)の場合】
・特定有期業務(            開始日:           完了日:          )

※1 「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。

2.有期契約労働者に対する明示事項等について

(1)更新上限の明示(労働基準法施行規則5条の改正)

→  有期労働契約の締結と契約更新タイミングごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の
有無と内容の明示が必要になります。

(2)無期転換申込機会の明示(労働基準法施行規則5条の改正)

→ 「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと※3に、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)
の明示が必要になります。

(3)無期転換後の労働条件の明示(労働基準法施行規則5条の改正)

→ 「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと※3に、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

労働条件通知書(2. (1)(2)(3)イメージ図)

契約期間 期間の定めなし、期間の定めあり(  年  月  日  ~  年  月  日)

※以下は、「契約期間」について「期間の定めあり」とした場合に記入

1 契約の更新の有無

[自動的に更新する・更新する場合があり得る・契約の更新はしない・その他(  )]

2 契約の更新は次により判断する。

[・契約期間満了時の業務量 ・勤務成績、態度 ・能力 ・会社の経営状況 ・従事している業務の進捗状況 ・その他(   )]

3 更新上限の有無(無・有(更新 回まで/通算契約期間 年まで))…(1)の内容

【労働契約法に定める同一の企業との間での通算契約期間が5年を超える有期労働契約の締結の場合】

本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをしたときは、本契約期間の

末日の翌日( 年 月 日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。…(2)の内容

この場合の本契約からの労働条件の変更の有無(無・有(別紙のとおり))…(3)の内容

(4)更新の上限を新設・短縮する場合の説明(雇止め告示※2の改正)

下記の場合は、更新上限を新たに設ける、または短縮する理由を有期契約労働者にあらかじめ(更新上限の新設・短縮をする
タイミングで)説明することが必要になります。

① 最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合

② 最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合

(5)均衡を考慮した事項の説明(雇止め告示※2の改正)

「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するに当たって、他の通常の労働者
(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項※4

(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないことになります。

※2  有期契約労働者の雇止めや契約期間について定めた厚生労働大臣告示(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)

※3  初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、更新のたびに、今回の改正による無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

※4  労働契約法3条2項において、労働契約は労働者と使用者が就業の実態に応じて均衡を考慮しつつ締結又は変更すべきものとされています。

(注)   無期転換ルールを意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めや契約期間中の解雇等を行う
ことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません。