労働安全衛生法に基づく健康診断について

令和5年8月25日  発行

事業者は、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。今月号ではこの内容について解説します。

1. 健康診断の種類

事業者に実施が義務づけられている健康診断には、以下のものがあります。

※   下記以外にも、有害な業務に常時従事する労働者等に対し、原則として、雇入時、配置替えの際及び6カ月以内ごとに1回(じん肺健診は管理区分に応じて
1~3年以内ごとに1回)、それぞれ特別の健康診断を実施しなければなりません。(特殊健康診断、じん肺健診、歯科医師による健診等)

健康診断の種類 対象となる労働者 実施時期
雇入時の健康診断(安衛則第43条) 常時使用する労働者 雇入れの際
定期健康診断(安衛則第44条) 常時使用する労働者(次項の特定業務従事者を除く) 1年以内ごとに1回
特定業務従事者の健康診断
(安衛則第45条)
労働安全衛生規則第13条第1項第2号※1
掲げる業務に常時従事する労働者
左記業務への配置替えの際、
6カ月以内ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断
(安衛則第45条の2)
海外に6カ月以上派遣する労働者 海外に6カ月以上派遣する際、
帰国後国内業務に就かせる際
給食従業員の検便
(安衛則第47条)
事業に附属する食堂または炊事場における
給食の業務に従事する労働者
雇入れの際、配置替えの際

〇 短時間労働者等について下記(1)(2)いずれも要件を満たす場合は、「常時使用する労働者」に該当します。

(1)期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上
使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。(なお、特定業務従事者健診の対象となる者
の場合は、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者)

(2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること

※1 深夜業を含む業務、重量物の取扱い等重激な業務、著しく暑熱な場所における業務、等

2. 健康診断の実施義務等

  契約形態 正社員 短時間労働者等

〇   無期契約

〇   契約期間が1年以上の
有期契約(契約更新により
1年以上になる場合を含む)

〇   契約期間が6カ月以上1年
未満の有期契約(契約更新により
6カ月以上となる場合を含む)

週所定労働時間
(対正社員)
1 3/4以上 1/2以上
3/4未満
1/2未満 3/4以上 1/2以上
3/4未満
1/2未満
一般健康診断 雇入時の健康診断 × ×
定期健康診断(1年以内に1回)
特定業務(上記1※1)への
配置替え時に行う健康診断
×
特定業務従事者の定期健康診断
(6カ月以内に1回)

〇 労働安全衛生法を根拠に実施する義務があるもの

△ 法令上の実施義務規定は無いが「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」
(平成5年12月1日基発第663号)により実施が望ましいとされているもの

× 実施根拠規定がないもの

※ 特殊健康診断については、契約形態および週所定労働時間によらず、あくまで有害業務に常時従事する場合に健康診断を実施する義務が定められています

3.その他

〇 健康診断の結果の記録

健康診断の結果は、健康診断個人票を作成し、それぞれの健康診断によって定められた期間、保存しておかなくてはなりません。
(安衛法第66条の3)

〇 健康診断の結果の所轄労働基準監督署長への報告

健康診断(定期のものに限る。)の結果は、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。

(定期健康診断、特定業務従事者の健康診断の診断結果報告書については、常時50人以上の労働者を使用する事業者、歯科健康診断の診断結果報告書については、歯科健康診断を行った全ての事業者。)