【Q1】「社会保険適用促進手当」とは何ですか。
【A1】短時間労働者等への社会保険の適用を促進するため、労働者が社会保険に加入するにあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給するものです。社会保険適用促進手当については、いわゆる「106万円の壁」の時限的な対応策として、臨時かつ特例的に労働者の保険料負担を軽減すべく支給されるものであることから、社会保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として最大2年間、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・ 標準賞与額の算定に考慮しません。
【Q2】今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)は、どのような方が対象となるのでしょうか。
【A2】今回の措置は、新たに社会保険の適用となった労働者であって、標準報酬月額が10.4万円以下の者が対象となります。支給対象者は特定適用事業所に勤務する短時間労働者に限られません。
また、事業所内での労働者間の公平性を考慮し、事業主が同一事業所内で同じ条件で働く、既に社会保険が適用されている労働者に対し、新たに社会保険の適用となった労働者と同水準の手当を特例的に支給する場合には、同様に、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しない措置の対象となります。
なお、キャリアアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コースについては、令和5年(2023 年)10 月以降に社会保険の資格を新たに取得した労働者が対象となるため、同年9月以前に取得している場合は支給対象外となります。
【Q3】同一事業所内の同じ条件で働く他の労働者にも同水準の手当を事業主が特例的に支給する場合に、標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないとのことですが、「同じ条件」「同水準」とは具体的にどのような場合を指すのでしょうか。
【A3】事業所内で既に社会保険が適用されている労働者については、当該労働者の標準報酬月額が10.4万円以下であれば、事業主が保険料負担を軽減するために支給した手当について、本人負担分の保険料相当額を上限として、標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しない措置の対象となります。
【Q4】今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)は、所得税や住民税、労働保険料についても対象になりますか。
【A4】厚生年金保険、健康保険の標準報酬月額等の算定のみに係る取扱いとなり、税等の他制度に関しては通常の取扱いとなります。
【Q5】適用事業所における短時間労働者の社会保険の適用要件である「所定内賃金が月額8.8万円」の判定において、社会保険適用促進手当は含まれるのでしょうか。
【A5】今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)の目的があくまでも、労働者の社会保険料負担を軽減することで社会保険の適用を促進することであることに鑑み、社会保険適用促進手当を含めて判断することとなります。
【Q6】社会保険適用促進手当は、(1)割増賃金、(2)最低賃金の算定基礎に算入されますか。
【A6】(1)割増賃金の基礎となる賃金には、①家族手当、
②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、
⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、算入しないこととされています。社会保険適用促進手当が毎月支払われる場合、①~⑦に該当しないと考えられるため、割増賃金の算定基礎に算入されます。
(2)最低賃金の基礎となる賃金には、①家族手当、
②通勤手当、③精皆勤手当、④臨時に支払われた賃金、
⑤1か月を超える期間ごとに支払われる賃金、⑥割増賃金は、算入しないこととされています。 社会保険適用促進手当が毎月支払われる場合、①~⑥に該当しないと考えられるため、最低賃金の算定基礎に算入されます。
【Q7】社会保険適用促進手当を支給する場合、この手当について、就業規則(又は賃金規程)を変更した上で、労働基準監督署への届出が必要になりますか。
【A7】常時10人以上の労働者を使用する事業場において社会保険適用促進手当の支給を行う場合は、就業規則(又は賃金規程)への規定が必要になりますので、就業規則(又は賃金規程)を変更し、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は、労働者の過半数を代表する者)の意見書を添付して、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
【Q8】今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)は、各労働者について2年限りの措置とのことですが、期間の終了に伴い手当の支給自体を取りやめる場合、終了時に不利益変更の問題は生じないでしょうか。
【A8】就業規則(又は賃金規程)において、予め、一定期間に限り支給する旨を規定いただくことで、その旨を含めて労働契約の内容としておくことが対応として考えられます。