年次有給休暇付与について

令和6年3月25日  発行

業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区別なく、一定の要件を満たしたすべての
労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません。今月号では、年次有給休暇の付与について解説します。

1. 年次有給休暇が付与される要件

年次有給休暇が付与される要件として、下記①②の両方を満たす必要があります。

要件① 雇入れの日から6ヵ月間継続勤務している(それ以降は1年間継続勤務ごとに)

要件② 上記期間の全労働日の8割以上出勤している

※ 「継続勤務」とは会社における在籍期間を意味し、勤務の実態に即して実質的に判断されます。
例えば、定年退職者を嘱託社員として再雇用した場合などは、継続勤務として扱う必要があります。

【出勤率算定に当たっての留意点】

・ 業務上の怪我や病気で休んでいる期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間などは、
出勤したものとみなして取り扱う必要があります。

・ 会社都合の休業期間などは、原則として、全労働日から除外する必要があります。

2. 年次有給休暇の付与日数

(1)通常の労働者の付与日数

継続勤務年数(年) 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数(日) 10 11 12 14 16 18 20

(2)週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数

週所定
労働日数
1年間の
所定労働日数
継続勤務年数(年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数(日) 4日 169日~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121日~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73日~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48日~72日 1 2 2 2 3 3 3

※ 週以外の期間によって労働日数が定められている場合

3. 年次有給休暇の時季指定義務

年次有給休暇は、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされていますが、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、
年次有給休暇の日数のうち 年5日について、使用者が時季を指定して取得させることが必要です()。

※ 年次有給休暇を5日以上取得済みの労働者に対しては、使用者による時季指定は不要です。

4. 年次有給休暇に関するQ&A

Q1    年次有給休暇の時効は何年ですか。

A1    年次有給休暇は、発生の日から2年間で時効により消滅します(労働基準法第115条)。

Q2    年次有給休暇に対して支払うべき賃金は決まっていますか。

A2    年次有給休暇に対しては、原則として、①労働基準法で定める平均賃金、②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、③健康保険法に定める標準報酬月額の30分の1に相当する金額のいずれかを支払う必要があり、いずれを選択するかについては、就業規則などに明確に規定しておく必要があります。なお、③による場合は、労使協定を締結する必要があります。

Q3    年次有給休暇取得に対する、不利益な取扱いについて何か決まりがあるのでしょうか。

A3    使用者は、労働者が年次有給休暇を取得したことを理由として、その労働者に不利益な取扱いをしないようにしなければなりません(労働基準法附則第136条)。 不利益な取扱いとは、賃金の減額など、年次有給休暇の取得を抑制するような全ての取扱いが含まれます。